このレビューはネタバレを含みます
「映像作家100人2019」に選出さえた吉野耕平さん(脚本・監督・VFX)発案のオリジナル作
幼いころの交通事故がきっかけで、ひとつの身体で曜日ごとに人格が入れ替わってしまう僕は、性格も個性も異なる7人は不便ながらも穏やかに生活していた。
主人公は一番地味で個性が薄い“火曜日”
まじめゆえ、掃除や通院などの雑用を他の曜日から押し付けられてしまう損な役回りだ。
行ってみたい図書館も休館日なので夢のまた夢…のはずだった。
単調な1日の終わりに、ぼんやりと火曜日ではない自分に思いを馳せるのだが、目が覚めると、そこは水曜日!
初めてのゴミ出し、初めての水曜日の朝の音楽
念願の図書館
初めての深夜の散歩に夜更かしして観る映画
司書の瑞野さんへ淡い恋心と来週の水曜日の約束
“火曜日”にとって、水曜日は未知の世界。
知らないもの(事)に触れるって、こんな喜びがあるんだなぁなんて観ているだけで新鮮な気持ちになった。
こうなると、なんとか来週も水曜日を過ごしたい“火曜日”
そりゃ、そうだよねぇ。
裏腹に、思いが強まるほど身体に支障をきたしていく。
“水曜日”が消え、“木曜日”も消え…そんな中で知った“水曜日”と瑞野さんの気持ち。
水曜日を返さなければ…と思っているところに、“月曜日”からの宣戦布告。
月曜日も他の曜日を消していて、今残るのは“月曜日”と“火曜日”2人だけ。
同じ自分なのに自分じゃないってどんな感覚なんだろう。
夢の中で、一ノ瀬が転校する前に気になっていた女の子だったことに気付く僕。
久々に家を訪れた一ノ瀬に、この家にくる経緯を尋ねると、一ノ瀬が“火曜日”を想っていることを知る。
この日は火曜日だけど、僕が“月曜日”だったのにはびっくり。
僕は7人分の同意書をもって、1人ではなく、7人で1人を選んだのでした。
「案外僕たち仲がいいんだ」という台詞が頭に浮かんできます。
御多分に洩れず、火曜以外はほとんど出てこないのね…と思ってしまいましたが(そりゃ、それぞれを演じる姿は観てみたかったよ)
ほとんど出てこないのに、7人分のキャラクターを自分の中に入れなきゃいけない中村さんや、それを知っている石橋さんは大変だっただろうなぁ。
一番キャラクター要素が弱い火曜日は、何を考えているのかよく分からないのと、素のような演技を観るのが面白かった。
全部知っていながら、さらっと寄り添う石橋さん、恋をしている深川さんの演技も素敵でした。
もう少し短絡的なストーリーだと勝手に想像していたので、104分にまとめてしまうのがちょっと惜しい。
長くすればいいってことでもないけど、ミステリー要素があるとしたら、もう少しだけ濃淡がある方が観終わった後にスッキリしたかなぁ…というのが個人的な感想。
特殊ケースだとしても、あの医療チームって何者?とか、仕事してなさそうなのに豪華な住まいは何故?とか
多重人格だとしたら、それぞれスマホ持つ?とか…
あと、理由なきシャワーシーンとか突っ込みどころはそれなりにあったかな。
気付かないだけで日常にある景色が変わるとか、誰かを思いやる優しさが伝わってくる作品。
事故にあった時のシーンが何度も繰り返されるのですが、割れた再度ミラーに映る鳥の演出が良かった!
原作を読んでからもう一度観てみようかな。