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リチャード・ジュエルのKotaのレビュー・感想・評価

リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)
3.4
“どのようにあなたを守れるかが分からない。”

忘れてはいけないのに、忘れかけられていた事件をもう一度映画にして世の中に発信するイーストウッド監督が今回切り取るのは、国家やメディアにより“爆弾魔”に仕立て上げられた一人の男。事件が実際に起こったアトランタの記念公園で撮影された。

圧倒的な権力の元、証拠が一つもないのにどんどんと犯人にされていくリチャードと、それを止めることができない母親ボビーの葛藤は終始静かながら心にズシっとくる。特に記者へのスピーチをするボビーのシーンは、キャシー・ベイツがアカデミー賞にノミネートされるのも納得の良演技。サム・ロックウェルは最早何をやらせても最高。

犯人の目処がつかない時、過去の類似事件や人物の傾向から犯人像を創り出しそれに当てはまる人を疑う。ここまでは仕方がないのかも知れないけど、問題なのはその後のメディアの取り上げ方。オリヴィア・ワイルド演じる記者キャシーはこの事件の後鬱病になり薬物大量摂取で2001年に亡くなっている。そこももう少し深掘りして欲しかったかな。個人的にイーストウッドベスト映画の“チェンジリング”にテーマが似てたけど惜しい感じではあった。
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