またしても好きな作品に出会ってしまった。台湾映画恐るべし。
A SUN - 陽光普照
心地良い穏やかなサントラに対し、なかなかに刺激の強い映像から始まる。
最初は、英語字幕で観ていたのも相まって弟と兄がいるのに気づかず、兄はアーフーの過去映像かと思って、なぜ別俳優を使うのか!?と大混乱してしまった。
簡単に言うと隠と陽に見える二人の兄弟。
親からも、周りからも、眩しさが盲点で、それまでの全ての影を背負っていたのは、たった一人だったのかもしれない。
「Dear ex - 誰先愛上他的」同様、台湾独特の猥雑な街並みや、カラーリングの切り取り方がとても美しい。とくに自動車学校の坂道のカットが悶えるほどカッコよくて痺れる。
普通のお家にある壁紙や小物がたまにとても突拍子もない派手さだったり、モダンだったりアンティークだったりするのは演出なの?リアルなの?教えて台湾暮らしの方。
アーフーが出院を言い渡されるシーンで、みんなが口を揃えて歌い出す“花心”、ああ、懐かしいメロディ…と思ったら、有名なあの曲の中国語版だったのね。
台湾映画に総じて胸をえぐられるのは、懐古だったり、飾らない家族の愛情だったり、隣人や同僚のそっけなさに隠れた人間の暖かみだと思う。
お葬式のシーンでほっとしてしまうのもそのせいかもしれない。
若い子の受験のプレッシャー、非行、妊娠、少年院、仕事、親の葛藤、全部全部詰め込んで綺麗にまとまる脚本の巧みさ。
A SUN - A SAN
登場人物が内心をはっきり吐き出したり、説明したりするシーンがあまり無いのも良い。
また噛み締めたくなって、次の日の朝にもう一回齧ったりしました。
とてもパワフルな映画です。