しゅんまつもと

夏時間のしゅんまつもとのレビュー・感想・評価

夏時間(2019年製作の映画)
4.9
プロットを文字にしたらとてもありふれた話なのに、実際に映ってるものがそれを越えて圧倒的に強い。自分にはこれをすごいとか深いとかよりも強いとしか表現できない。

(体感として)全体の4割強くらいを食事シーンと睡眠シーンが占めているのではないだろうか。
特に、父親が祖父が眠るのを見つめてから息子のドンジュを夏休みなのに学校の時間だと嘘をついて起こすまでのシーン。後からそれらしき説明がされるものの、行動の前の一瞥でそれを想像させるだけの強度がある。

オクジュが寝ていると音楽が聴こえてきて、階段を降りると祖父が微笑みながら一人音楽を聴いているシーン。それを見つめて再び階段を上がっていくかと思いきや途中で座り込むシーンも、何故かはわからないけど胸を掻き立てられる力がある。
この階段の上り下りやオクジュが寝室に広げる蚊帳、盗んでプレゼントした偽物の靴からは、やはり大人と子供の間で揺れるオクジュの心情が…とかそんなことやっぱり言葉にしてしまうととても陳腐にも思えてしまうんだよなあ。

ひとつの家で暮らす3世代も誰もが片方の両親を欠いていて、あくまで2組の"きょうだい"になっているのもポイント。時間が読めない夜の暗闇から一気に真っ白なシーンにジャンプする編集も常にハッとさせられる。微睡は唐突に終わりを告げる。