ごろちん

もうひとりの人のごろちんのレビュー・感想・評価

もうひとりの人(1988年製作の映画)
4.8
色んなことを考えさせられた作品。

ハンガリーが舞台の戦争映画は今まで観た記憶が無くてすごく新鮮!この作品は1944年の敗戦色が強くなり始めた頃のハンガリーで前線から命辛々逃れた兵士のその後。

戦時下であっても父から子へ引き継ぐもの、受け継がなければならないものとは何か。父親のアンティは武器を持つという行為が自分と他者にどういう結果をもたらすのか息子に伝えようとする。

武器を持たないといえば『ハクソー・リッジ』が思い浮かぶ。『ハクソー・リッジ』は戦場で武器は持たないという信念を貫いた兵士の実話。個に焦点を当てた英雄伝といったところがいかにもアメリカ映画っぽく、エンタメ的な演出も多々あった。

対してこの作品は暴徒化する学生たちを通じて、武装化することは無益であるというメッセージを未来の国民に伝えたかったのではないだろうか。両作に資本主義や社会主義といったイデオロギーが反映されているのかは分からないが、個人的にはメッセージ性の強いこっちの作品の方が断然好みだった。

後半のハンガリー動乱の激しい市街戦シーンを観ていたら、激しさを増す香港のデモ活動のことが頭を過ぎった。劇中で「武器を持たなくなるのはまだ先だ」といった言葉が出て来たが、香港は雨傘運動を始めその先駆者。香港でこれ以上被害者を出さないためにも、市民の武装化がエスカレートしないことを切に願う。昔も今も武器は悲劇しか生まない。
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