Hrt

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編のHrtのレビュー・感想・評価

3.7
初見で既に粗筋と大体の絵面を知っているという状態の映画はかなり稀だと思う。
なぜなら小説原作でもなくアニメ特有の映画オリジナルストーリーでもなく漫画本編の物語の一部分の映画化だから。
こんなこと今まであった?と思うような、不思議な感覚でスクリーンを観ることは面白かった。
『鬼滅の刃』という漫画自体の魅力は今さら述べるまでもないが、ここまでのヒットはさらにアニメーションの徹底した細部までの作り込みが大きい要因となっている。
もはや実写に近い風景描写、鬼殺隊の呼吸の剣技にかかるエフェクトのバラエティに富むかっこよさがダイレクトにスクリーン映えする。
制作したufotableの狂気じみた仕事ぶりを目の当たりにして震えが止まらなくなってしまった。
このクオリティを担保するにはTVアニメ終了から1年以上要するのも納得できる。

劇場版としての無限列車編は『鬼滅の刃』入門作としても十分機能する。
2クール分のTVアニメを完走するよりも2時間スクリーンを眺める方が断然ハードルが低い上に、このストーリーの根幹である人間の夢に寄生する鬼との戦いが効果的な視点をもたらす。
つまり「夢の中」でそれぞれの潜在意識の世界を見せることでキャラクター造形を簡略化して説明できてしまう。
説明しすぎていろいろ過剰になってる部分は悪い意味で漫画どおりだが子どもが見る分には(そこも余白を残した方がいいとは思うものの)理解の一助になっている。

様々な記録を更新している本作なので、また同じく本編のどこか(おそらく最終章)で劇場版は作られると思っている。
このクオリティで劇場版にできるならそれも大歓迎する。TVアニメに戻るにしても今まで以上に大きな動きになることは違いないだろう。
Hrt

Hrt