このレビューはネタバレを含みます
とんでもない作品に出会った。物語、演出、それらに乗せられたメッセージ、本作のあらゆる点が巧妙だ。真に罪深いのは誰か。全ての犯罪者が罪深いのか。一般人は罪深くないのか。一般人は聖人なのか。自分が真実と考えるものが危うくなるような作品である。
何より画が美しい。ダニエルが初めて代理でミサの勤めを果たした日、教会の窓から差し込む光とそれに照らされたダイエルの美しさたるや、かつて犯罪者だったとは思えない美しさである。ひとつひとつのカットもさることながら、カメラのフォーカスを遷移させることでシーンをうまく繋いでいる演出も素晴らしい。目の疲れるようなカットワークではなく、カメラが止まった状態で解釈の余地を与える演出には脱帽である。
このようなロートーンの作品は肌に合わないことが多いのだが、本作は例外である。見終えた後の何とも言えない感情は本作を観た人にしかわからない。ぜひ劇場に足を運ぶことをおすすめしたい。