ryo

ファミリー・ネストのryoのレビュー・感想・評価

ファミリー・ネスト(1977年製作の映画)
-
《ダムネーション》がいかにも映画的な構図を多用する作品だったので、《ファミリー・ネスト》が対象を追う記録的なカメラで少し驚いた。文体を確立する過程、とも言えるし、記録という出自を離れて純粋を目指すという、かつて文学に生じた運動がタルヴェーラの中にもあった、とも言える。
フローベールの次の言葉は、風の吹き荒ぶなか井戸の水を汲む、とか、毎日繰り返しじゃがいもを茹でて潰しては腹に入れる、といった、生きていくために必ず行われなくてはならない行為のひとつひとつを執拗に撮ることによって成り立っている《ニーチェの馬》を思わせる。「私の書きたいもの、それは何について書かれたのでもない小説、文体の力によってのみ成り立つ小説、ほぼ主題を持たないか、少なくとも主題がほとんど目につかない小説です」。
ryo

ryo