織田

運命じゃない人の織田のネタバレレビュー・内容・結末

運命じゃない人(2004年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

『アフタースクール』や『鍵泥棒のメソッド』を観てから、ずっと観たかった映画。快感でした!

パズルのピースがぱちんぱちんと嵌まっていくような内田けんじ監督作品。その原点ともいうべく映画とあって期待値高めで観たんですが、やはり美しく・軽やかに回収作業が行われていきました。本当に裏切らない。伏線を一切取りこぼさない。それでいて難解すぎることもなく、鑑賞後はずっしり満腹感。腑に落ちる。

爽快なパズルの嵌め合わせには少々の理不尽が必要で、それが本作品でいえば錠破りのできる便利屋。ここが気にはなったけど、「人生はニアミスだらけ」のスリルはこの少し強引な設定で担保されているはずです。宮田の購入した高級マンションでもピッキングされちゃうのは結構怖い。

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あと印象深かったのは浅井さんの収支面。「面子」に関わるアレを無事に処理できたら、100万を勇介から受領したことで結局プラスになったのか。それとも便利屋を使うなどの人件費により赤字になったのか…。「携帯代が月に15万円」っていうのも、組全体なのか一人あたりなのかでだいぶ意味合いが違いますが後者でしょうね。笑

ちなみに「携帯番号くらい教えてもいいじゃない」という運転手のセリフと、結局宮田に嘘の電話番号を渡した真紀のシーンも印象深かったです。当時はSNSもまだないから、つながる手段が携帯電話の番号とメールアドレスくらいしかないわけですよね。
その「くらいしかない」を重大な個人情報と捉えたのが真紀で、一方、それくらいしか機会がないんだから教えてあげなよというのが運転手なのかなとも。

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そんな携帯電話も使い方としてはもっぱら通話。メールで細かい指示をするとかそういうのはなく、あくまでも通話してる両者の「今」のシーンですよね。対面、通話問わず「今」を描くことにより、その当事者たちは物語上において、"この時間に⚫︎⚫︎をしていたアリバイ"を獲得していると思うんです。このアリバイとは鑑賞者に向けたもの。

だからこの映画には後出しがないんですよね。鑑賞者の前で起こっていることは全部(真実ではないかもしれないけど)事実であり、鑑賞者に見えていないところで何か物語を進めたり転換したりしない。その代わりに同じシーンを別視点から描く脚本の妙があって、「事実」の解説(=伏線の回収)をおこなっていきます。凄い。


正直前半の宮田パートまではだらっと観てしまっていましたが、やはり回収ターンに入ると一変。(多分前半部分の影響で)98分という尺よりも長く感じた一方、ラストシーン後の、続きをもっと観たい!という欲が拭えず、何とも魅力的な作品でした。繰り返しますが本当に内田監督の映画は期待を裏切らないです。笑
織田

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