keith中村

フライト・キャプテン 高度1万メートル、奇跡の実話のkeith中村のレビュー・感想・評価

5.0
 あー、もう。好き好き大好き!
 正直、舐めてて、何なら「へっへーん」と鼻で嗤ってやろうと思って観に行ったら、これが大好物でした。
 なんと監督はアンドリュー・ラウ! 予備知識なしで足を運んだので、冒頭のクレジットで初めて知りました。
 
 まず、第一幕はテンポと手際よさに陶酔。
 機長の一日の始まりから、どんどんクルーが集まって、乗客が集まって。
 ここの描写の積み重ね。
 航空会社のPRビデオじゃないかしらと思うような爽やかさの中で、人物紹介が進んでいき、死亡フラグ(まあ、本作は実話ベースで誰も死なない物語なんだけれど、一般的にいう「死亡フラグ」ね)な台詞がどんどん出てくる。
 そりゃ、ワクワクしますわ。
 編集の気持ちよさは、ミュージカル映画やMTVを見ている感覚になって、もうニコニコしっぱなしでした。
 で、20分ちょっとで離陸まで持っていく。まあ、見事。
 
 離陸してからは人物描写と、「ヤバいと思ったら、一回セーフ」な出来事があって、その後いよいよ事故発生。
 ここら辺からの第二幕、そして続く三幕は、ストーリー運びとしては乗り物パニックもの・航空パニックものの定石どおりなんだけれど、ここはずっと人物たちの、いや、作品の真っすぐさにやられ続けました。
 
 何の衒いもなく、ひたすら真っすぐで真摯で無垢で愛おしい人物描写。
 いやいや! あの込み入った「インファナル・アフェア」三部作のアンドリュー・ラウが、ですよ!
 もう、こんなに直球で懐に飛び込まれたら、はすに構えた冷笑的な鑑賞なんかできません。
 ニコニコニコニコしながら、涙ぐんじゃう。
 スクリーンの中のクルーや乗客の皆さんと一緒に、親指立てたり、(小さくだけど)拍手しちゃいました。
 
 そして、エンディング。
 通常、乗り物パニックものは、乗り物から降りてさっと終わるのが身上なんだけれど、そこで時計を見ると意外と尺が残っている。
 どうなるんだ、と思っていたら、
・降りてからのオベーション
・後日、目的地にたどり着く観客たちの姿
・一年後の打ち上げパーティ
 と、多幸感に満ちた長~~~いエンディングがあるわけですよ。
 最高です!
 
 あと、女優さんたち。
 全員が全員あり得ないレベルの美女軍団なのも素晴らしかったですよ!
 ちょっと出てくる管制塔の女性や、航空オタ(この「善意の傍観者視点」は「オデッセイ」の終盤にも通じる)に至るまで超美人!!
 
 さらには、最後の最後の。実話ものに不可欠な、「エンドクロールで本人たちが映る」ところも面白かった。
 なんと、本人と演じた役者さんのツーショットが延々と続くのです。
 「スクリーンの真ん中でスプリットして、左に本人、右に役者」ってパターンはちょいちょいあるけど、「イェーイ!」みたいな感じでツーショットの映画って、ほかにあったっけ?!
 
 家に帰ってきて振り返れば、国家全面協力の「中国の航空安全プロパガンダ・フィルム」に過ぎないとも思うんだけれど、すでに書いたとおり、そんなシニカルな見方ができないくらい愛くるしい可愛い可愛い作品です!