ピッツア橋本

すばらしき世界のピッツア橋本のレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.7
※最速上映試写会にて鑑賞

"今なら、ようわかります"
殺人罪によって13年の刑期を終えて出所した元ヤクザの三上正夫(役所広司)がカタギになる為に奮闘する社会派ヒューマンドラマ。

あらすじだけでいうとTVドラマに良くありそうだが、西川美和監督が手掛けるとこうも緻密で息苦しい社会問題が浮かび上がるかと悲しくなる。

平成29年に出所というのがポイント。
三上にまっとうな履歴書はないが『身分帳』という彼の計28年の獄中記があり、それを基にTV取材の話や彼の出生にまで話が展開していくのが興味深い。

三上にとって反社って単語に何じゃそりゃとなるし、生活保護や雇用問題など、一度レールを踏み外した人間には厳しい現代日本の現実というのがギュッと詰め込まれている。観てて窒息しそうになった苦笑

タイトルが皮肉たっぷりの内容。所々笑えるところもなくはないけど、絶望の果てのほんの一握りの希望や人情を楽しむ感じ。
ケンローチ『わたしは、ダニエルブレイク』を思い出させた。『孤狼の血』ではない笑
気分が落ちてる人が観ると危険かも。

ただ梶芽衣子の生歌や六角精児の鑑定じゃない演技は新鮮。チョイ役ながら安田成美の演技も素晴らしかった。

西川美和作品は全部観てるが、今回が一番重くてズシンと来ます。

社会をまざまざと突きつけられるヘビーな一作です。
ピッツア橋本

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