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すばらしき世界のradioradio526のレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.0
「生きづらい世界に差し込む一筋の光明」

「すばらしき世界」鑑賞。

人生の大半を裏社会と刑務所で過ごした男のその後を描いた実話からの創作。
殺人を犯して13年の刑期を終えた三上正夫は目まぐるしく変わってしまった社会から取り残されていた。
身元引受人の元弁護士らのサポートを受けて何とか社会に馴染もうとする。
そんな三上の願いは生き別れの母親との再会だった。
TVディレクターの津乃田が三上に近づき、その願いを叶える為にドキュメンタリーを撮ろうとするが…。

「ヤクザと家族」でもストーリーのポイントになっていたが、現代の反社会勢力に対するその「生きづらさ」がひとつのカギになっている。
長きに渡る刑期を終えて…というのが別世界への入り口のように描かれている。
明らかに古いタイプのヤクザのまま社会に戻された三上はその居場所の無さを嘆く。
物事の筋の通し、弱気を助け強きを挫く…まともな感覚であるが為の苦悩。
多くを望んでいる訳じゃない…ささやかに堅気として生きたいだけなのに。

西川美和監督作品に役所広司が主演…期待せずに待つのが無理なので情報を遮断して出来る限り、期待を抑制した。
それもキャストを知って瓦解した。
仲野大賀、北村有起哉、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、長澤まさみ、安田成美、白竜、キムラ緑子…いやいやメンツ良過ぎるって。抑制…無理!
皆素晴らしいんだけど…仲野大賀(津乃田)は良かったなぁ。彼しかあの役出来ないわ。
三上の人間性に徐々に引き込まれていく感覚が伝わってきた。
あと、北村有起哉は本当に全ての監督が使いたがる役者なんだと思う…今回も心情の機微が伝わってきて素晴らしかった…低温でジワッとくる演技派。
あと長澤まさみの使い方が贅沢なのと…白竜が白竜過ぎてグッときたw

いつもオリジナル脚本からメガホンをとる西川美和監督…その新作に原作があるのも驚いた。
少し前に原作本である「身分帳」を購入したけど映画を観てから…と未読のままだ。
ゆっくり…読む。
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