blacknessfall

プラットフォームのblacknessfallのレビュー・感想・評価

プラットフォーム(2019年製作の映画)
3.4
男は目覚める。そこは上下に幾層にも続く建物の48層だと気づく。相部屋の男から建物を貫く穴から食料が載ったテーブルが降りてきて層に留まる時間だけ食事ができると聞く。
食事は上層の者達の食べ残しが降りてくる。48層なら充分な量があると。だが定期的に入れ替えがあり下層に落ちたら食べ物が何もないことも。

限定空間のシチュエーションホラーなんだけど、この映画はゴアや恐怖よりポリティカルメッセージに主眼を置いてる。
層は200層あるが実は皆が等分に食べ物を取れば全員に行き渡るだけある。しかし、上層の人間達は好きなだけ飽食するから100層あたりで食べ物が無くなる。
これは世界の土地や金銭、食料問題の寓話。
腐るほどある食料が大量に廃棄されてる国もあればその日の食事も儘ならない国もある。
そして同じ国の中にもその不均衡は厳然とある。互いに思いやればみんな幸せになれるのに取れる立場になるとそれを忘れ強欲になり、何も取れない立場になると同じ境遇の人間から奪う。

この建物はまさに世界の縮図で上層で飽食しまくり下層の人間を嘲る人や下層の者が相手を陥れ殺して相手を食べる胸糞な地獄絵図がトーチャー・ポルノの手法でグログロに画かれる。

カニバル・シーンとか力強くて最近のこの手の映画の基準をきっちりクリアしてるし、殺伐として荒廃し張り詰めた空気感もあって限定空間ホラーとして申し分ないクオリティ。
でも、ポリティカルなメッセージ性が勝ちすぎててあまり楽しめなかったな、軽く説教されてるようで笑
ポリティカルなことをホラーでやってはいけないわけじゃないけど、それをメインにしてホラー作るのはかなりセンスがいるのだと思った。『ゲット・アウト』のジョーダン・ピールはその点すごいなと思った笑
世相や社会の歪みを反映させるのは現実と地続きだと言う気持ちが換気され、リアルとリンクすることで恐怖を生む効果が出る。けど、やり方間違えると白けるんだよな。
これは自分があまりホラーに社会への批評性を求めてないからかも知れないけど。
ロメロのゾンビ映画みたいに舞台の必然性として結果的に秀逸な社会批判になってるのは全然ありなんだけど、メインがそれてのはやっぱり違う気がするなぁ笑

それとこの建物の背景がまったく明らかにならないのも消化不良だった。結局、誰が何のためにこんな建物やシステムを作ったのか?入ってきた人達は自ら志願してるし、ある期間過ごすと“認定証”を貰えるというけど、それを貰えるとどうなるかもわからない、、メッセージ性の強い寓話みたいな話だから世界システムの象徴なんだろうけど、それは話の世界の設定とは別だからな。そこをちゃんと説明して欲しかった。
まさか、続編を狙ってボカしたとか?
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