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花束みたいな恋をしたのあのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
3.5
配給 東京テアトル リトルモア

好きなもので盛り上がるのってとても楽しいしうれしいけど
それはその共通項を通して見るからその人自体が何倍も良く見えてしまったり
楽しさや盛り上がりのせいで他の部分が見えにくくなってしまう危うさがある
その瞬間・瞬間は絶対楽しいんだけど(好きな事で盛り上がりすぎて他の話できなくてああ今日も無理だったなみたいなのもめっちゃわかる)
そこが合うからといって考え方や価値観が同じわけではないのに
もちろん好きなものが似ていると物事を見るときに合う部分もある だからこそ勘違いしがちで 突き詰めていくと合わないと気がついたときの絶望感と言ったら
しかもひとつ無理と思うとどんどん嫌な部分や合わない部分が浮き彫りになって見えてきたりする 付き合いが長いとなおさらそうなる
そういう描写でグサグサ刺してくるような映画だった

特に働くことや仕事に対する意識って生活に大きく関わってくることでもあるから一緒に住むとなると結構シビアな部分で
お金がなければ生きることってできないから必ず働かなければならないし 有村架純は明らかにお金持ちそうな家なので(親が広告勤務だし何者だよ)あまりいままで苦労したこともないのだと思う
(わたしなんて超就職氷河期のときに死ぬほど就活したぞ!!!)
だからこそ好きなことして生きたらいいよね的なスタンスでいる 資格を取ったのも菅田将暉が頑張ってるからわたしもなんかやらなきゃ的な 安易に資格さえとれば良いと思って しかもその資格を活かした仕事ではなく最終的には本当に楽しいのかどうかもよくわからない会社に入ってしまう(ああいう業界にいそうなオダギリジョーのキャスティングが最高)

いまの日本の映画で(特に恋愛映画で)仕事について切り込んでくるのはすごいと思った
菅田将暉の絵の仕事も さすがにあそこまで酷い依頼者って見たことないけど(私的にはLINEで仕事のやり取りしてくる時点で無理)
絵を描かない人に限って無理を言ってきたり作品を蔑ろにしがちなので そういう人は自分で切っていったら良いと思うのに菅田将暉はそれに縋ってしまっている それしかないから
たとえ仕事がもらえたとしても後の自分にとってプラスになるようなものしか引き受けない方が良い
仕事は言った・言わないでモメるのが一番面倒なので 大事なことはちゃんと最初に明確にしておいた方が良いし そういう事に関しては自分なりに対策するべき
絵1本で働き続けるって大変なことなので 菅田将暉はこんなのでなんでやっていけてるんだろうか...と思ったらまさかの親からの仕送りでドン引きした
(菅田将暉全然好きじゃないので仕事のやり方も何もかも甘いよ菅田将暉!!この野郎!!と思いながら観ていた)
菅田将暉はいろんな話するのに有村架純に絵の話はあんまりしないんだよな 自分なりになんとかしたいというよりも入ってきてほしくない(入れたくない)領域なんだろうなと感じた(そういう点もふたりがダメになる原因を作ってる

就職して今度は好きなものに対する熱が無くなっていく様子もつらすぎた
かといって有村架純が何かできるわけでもなくて
愛だけで生活できるわけじゃない 好きなことや心が豊かな生活をしようと思ったらある程度金銭的・時間的余裕がないと自分がしんどくなるだけ
どんなに大事な人が側にいても無理なことだってある それを抱えて生きていくバランスが大事なのに ふたりとも(特に菅田将暉)極端にどちらかしかできない というかお互いの深いところまでを知らなさすぎたんだと思う

坂元さんは『最高の離婚』で初めて知って朝ドラと大河くらいしか続けて観られなかったのに 面白くて毎週リアルタイムで観てたドラマで それ以来だった
怒涛の長台詞とじわじわ責める罵り合いのような喧嘩のシーンは坂元さんらしくて あの感じを久々に思い出した (カルテット観たくなった)
あの流れで結婚しようって言うのとか その後の有村架純の返しも含めて全部地獄

他にも予定が流れて怒っているのに無理して普通を装っているような有村架純の演技も凄い
有村架純が菅田将暉のこと考えてるようで実は全然考えられてないところも結構見ててきつかった
残業しまくりで疲れた金曜の後に長尺の牯嶺街とか無理に決まってる どんな神経してんねん!考えろ!!とツッコミたくなる (そんな女やめときなよ)

サブカルの描写がちょっとくどくて観ていてイライラした あそこまでの人はさすがにないだろ
とはいえふたりのサブカル具合は見てて無理無理こういうタイプのやつら絶対仲良くなれないと思ったけど 映画好きで普段人と語りまくってる自分もあれと同類なんだろうなと思う...
ふたりがお互いの好きなものについて深く語るシーンがあまりなかったのが惜しかった(名前や作品名とか出すだけなのでけっこう薄い感じがするしそれは意図的にそういう演出で表面的な文化を享受している人?という意図があるのかは謎)
あのタイミングでカウリスマキの希望のかなたを観たら語るべきことってたくさんあるだろうに...あのふたりはどんな感想を抱いたのかな というよりあのふたりはカウリスマキを観ている自分たちに酔っているような気もする(牯嶺街の扱いも然り
ああいうサブカルすきそうな人たちが履いてますNo.1のスニーカー(偏見)っぽいジャックパーセルは絶妙なチョイスで良かった(だからジャックパーセル絶対履きたくないんだよ

ラストのファミレスのシーンの菅田将暉が 話を切り出されることをわかって写真を見たり 逸らそうとするところ おいそういうとこやぞ!!となって多分有村架純と同じ顔で見てた 若い頃の自分たちを見ているかのような いつもの席はなくなっていて もう良かった日は過去のことになってしまう辛さ 泣いちゃうよね...
楽しかったことがたくさんある分辛いし しあわせな結婚式と対局にある別れを考える流れからのふたりのことも辛すぎた 巧い
別れてから家が見つからなくてちょっと一緒に住んでる期間があるのもリアル

でも別れた人がそれで終わりになる関係性じゃなくてちゃんと良い思い出も悪い思い出も自分を形成したものとして残っていくっていうのがこの映画の救いでそれってすごく難しいことなんだけど あの手の振り方は映画的でとても素敵だった
あそこで終われば良かったのに惜しい google mapにふたりが映ってました演出は蛇足だと思う
スマホ越しの告白シーンも自分だったらこんなので言われたくないなと思った笑

あとわたしは初めて会った日に本棚や原画は絶対見せたくないな
「うちの本棚だ」とか言われたら気持ち悪くて無理
あと漫画は一人で読みたい ペースがある
なんかサブカルを描いているわりにわかっているのかいないのか微妙なラインの演出や脚本も多かった印象
町田康や川上未映子は読まないのか〜とか

ペコさんの絵や大友さんの音楽も素敵だったので(昔ペコさんの展示で原画見た絵が出てきてテンション上がった)
観た後の余韻が重くならないのが良い

韓英恵さん 古川琴音さん ちょっとしか出てこない人もみんな良かったな...

だらだらなっがい感想書いたけど でもやっぱりなんだかんだで映画とか話せたり趣味が合う人が良いよね〜と思ってるわたしはこの映画から何も学んでません!!!!!
あ