グラビティボルト

カモン カモンのグラビティボルトのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
3.9
初マイク・ミルズ
んで、秀作。
実際に子供にインタビューした素材を使っていたり、虚/実が混じる。
でも、ちゃんと画作りや演出が機能している。
インタビュイーとの単調な切り返しだけでなく、役者という「虚」と視線を繋げるパンフォーカスがあった。
特に気に入ったのは、ドアのガラスや戸当たりを使ったフレーム内フレーム演出。
ラストショットで叔父&甥の交流する様を捉えながらゆっくり引いてくんだけど、ここでも戸当たりで空間が二重にフレーミングされている。
最終的にこの映画を優しい嘘として着地させる決めのショット。
見事。

あと、主要二人のやり取りの捉え方に差異を設けることで距離感を描写する構成も巧み。
最初のビーチで話す場面ではオーソドックスな切り返しと見事なロングショットで構成されるんだけど、NYに移って互いの心の距離を計る場面では切り返しの合間にホアキン側がウディ・ノーマンのフレームに立ち入ってハグしようとする。
まず大人の側から子供のフレームに踏み出すこと。
これを役者の動作と画作りで表してるのが素晴らしいし、この段階ではまだホアキン・フェニックスはウディ・ノーマンに拒絶されてしまうのも素晴らしい。
119分という普通の尺ながら子供/大人の心の距離の伸縮にじっくり時間を掛けている。
んで、一度縮まった距離が微細なやり取りの瑕疵で再び拓いてしまう悲しさも撮っている。
こういった細かい演出が志向出来るのは、子役がきっちり応えられてるからだと思う。
今年ベスト子役映画では。