みかんぼうや

カモン カモンのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
4.0
“大人が考える理想や論理”と“子どもが見ている目の前の現実”のギャップを描いた作品。そのギャップを抽象的にしか捉えられなかった序盤は、淡々とした演出もありイマイチ作品にのめり込めなかったが、話が進むにつれ、そのギャップが何なのかを自問自答し(まさに本作のホアキンのように)、その答え探しの旅にグイグイと引き込まれていく。

最初は一見しっかりと甥っ子ジェシーに向き合い面倒を見ているように見える叔父ジョニーだが、きっとそこには「奇妙な言動をする甥っ子に合わせて付き合えばいい」という、子どもを甘く見た意識が潜在的にあったのだろう。

しかし、子どもは大人が思うよりもよほど大人の考えを感じ取っているのかもしれない。一見とても奇妙だったり身勝手でわがままに見えるジェシーの行動の奥には、「もっと僕を見て!」「僕が辛い時に僕を受け入れて守って!」という、言葉では表せない強い愛情の欲求があったのだ。

甥を預かり面倒を見ることになった叔父という、どこにでもありそうなシンプルな設定かつ大きな動きがあるわけでもないのに、気が付けば2人のやりとりと叔父が甥の感覚を知りゆく中で縮まっていく距離感に俄然引き込まれているのは、この2人の素晴らしい演技となんとも繊細で緻密な演出と脚本の賜物に他ならないだろう。

大好きなあの「ジョーカー」を演じたホアキンがどのような演技をするのか、という興味本位で観始めた本作だが、気付けばそんな事実さえ忘れ、このジョニーとジェシーの2人が生み出す味わい深いヒューマンドラマにただただ魅了される、とても素敵な作品だった。
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