すがわら

tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!のすがわらのレビュー・感想・評価

5.0
ジョナサン・ラーソン29歳が、30歳の誕生日を迎えるまでの8日間の話。

 冒頭の印象的なセリフ、「あと8日で俺の若さは消えてなくなる」という気分は非常によく分かる。
 私事で恐縮ですが、僕は来月で20歳になります。石森章太郎やジョージ秋山は20歳前にデビュー済み、樋口真嗣は『八岐の大蛇の逆襲』で特技監督をやっていた。まさに「あと二十数日で俺の若さは消えてなくなる」という感じ。この、なんとも言えぬ焦燥感は節目節目で必ずやってくるんだろうなと思う。
 ただ、この映画を観て一つ明確に分かったのは、人間30歳になった瞬間"BOOM!"と爆発したりはしないのだということ。当たり前のことだけど中々実感しがたい。多分、30歳が終わると何食わぬ顔で31歳がやって来て、次は32歳、33歳…と延々続いていくだけなのだろうが、今ひとつピンとこない。
 人生は滔々と続くがしかし、この映画の肝は"BOOM!"は誰の身にも必ず起こるのだという点なのだろう。エイズの蔓延が顕著だった90年代ニューヨーク、殊にブロードウェイにおいて死は差し迫ったものであり、それを"Tick,Tick…BOOM!"と称したこの作品は直喩的表現において正に正鵠を射ていたと言っても過言ではないと思う。ジョナサンはエイズではなく大動脈解離であったがこれも時限爆弾に比喩されて然るべき疾患。

「死を忘れず、今日の花を摘め」的な映画。

アンドリューガーフィールド歌うまいなと思った。 

 
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