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tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!のmityのレビュー・感想・評価

3.5
個性的なタイトルが気になっていた作品。『RENT レント』の脚本家ジョナサン・ラーソンさんの自伝ミュージカルの映画化ということで、音楽満載だった。

8年もの歳月を費やしてきたミュージカルの視聴会が成功しなかったら・・・自然と湧き出たであろうその焦りをコントロール出来ないまま、ただ過ぎ行く時間の先にある30歳という節目。29歳が持つ若さを失い30歳になってしまう、なのにまだ何者にもなれていない不安も、きっと焦りに拍車をかけただろうと思う。書かなきゃいけないのに書けない、自分の中から生み出せないことへの苛立ちが全部自分に返ってくる悪循環・・・。ジョンが感じた焦りも不安も苛立ちも、同じではないにしろ少なからず身に覚えがあって、あぁこの作品には共感が詰まっているんだなと思った。

夢と現実の狭間でもがいてあがいて苦悩するジョンだけでなく、夢を諦め会社員生活を送るマイケルや、夢破れたのち新たな目標を持ったスーザンのように、似たような経験を持つ人にとっても何かしら共感ポイントがありそうで、間口の広い作品だなと感じた。

ジョナサン・ラーソンさんが、『RENT レント』の大成功を知らずして旅立っていたことが、私には何とも衝撃的だった。時間を越えて残り続ける作品とは違い、人生には期限がある。だから“今”をちゃんと生きなければいけないな、と思えた作品だった。


#144_2021
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