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渇水のmityのレビュー・感想・評価

渇水(2023年製作の映画)
3.5
陽照りが続けば雨を切望し、雨が続けば太陽を切望する。自然に願うことでしか給水制限は解除されない。いっとき地面を濡らして水溜まりを作ったところでなんの役にも立たない。それでほんの僅か、恵子と久美子の心を潤しても解決には繋がらない。気紛れの同情が役に立たないことを、岩切は分かっていたと思うけれど、でも木田に同意を求めたあの時の岩切の眼は、気紛れじゃなく本気だったなとは思った。本気で渇きを潤したかったんだなと。

最後のライフラインである水が止まった家に、幼い姉妹しかいなかったら···。規則に従い停水執行を行うのが、水道局に勤める岩切と木田の仕事。職務の遂行か良心か、なのであれば、通報という手段も考えられたのではと思った。岩切には止められなかったんだから、停水執行も母親も。

父親がいなくなり、母親もいなくなり、それでもお父さんの話を楽しそうにして、お母さんの帰りを待つ久美子。その久美子の無邪気さが無邪気な分辛く、その無邪気さが鳴りを潜めるのもまた辛かった。そうすれば全部上手くいくはず···その言葉が私にはとても虚しく響いたな。

水道料金を徴収して回り、滞納が続けば停水する。自分が少しずつ削れ、自分を失っていくような感覚になる人にはきっと向いていない仕事なんだろうなと思った。そして、開栓してしまった岩切は、もう二度と閉めることは出来ないだろうなと思った。


#お家映画_25
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