井中カエルand物語るカメ

子供はわかってあげないの井中カエルand物語るカメのレビュー・感想・評価

子供はわかってあげない(2020年製作の映画)
3.5
沖田修一らしい日常表現の中の柔らかな変化を肯定的コミカルに描いた作品に
長回しや細かな間をうまく使い独特の間合いを生み出すとともに、階段と屋上のシーンだけでも十分見応えがある映像を表現する
柔らかい青春の描き方などに沖田節を如実に感じさせる作品だった

主演の上白石萌歌の健康的な美しさとはつらつとした様子には強く目が惹きつけられる
10代最後の夏に撮ったようだけど青春のほんのひとときを美しく真っ当にカメラに収めてもらえるのは美点ではないだろうか
上白石萌歌の美波にずっと惹かれていたし、ずっと見ていていたかった最高のヒロインだった

上白石姉妹はお姉ちゃん推しだったけれど今作で妹さんの魅力がめちゃくちゃ伝わってきた
舞台挨拶の感じだと今は綺麗すぎるのであの時にしかできない健康的な魅力で、あぁこの年頃はホントにナマモノだなぁと感じました

2021年最高のヒロインの1人でしょうね


ただ原作を読んだ身からするとアレンジが結構大幅に効いていて、紛れもない沖田修一作品なんだけど観たかった世界観やシーンがなかったことはちょっと気になっていたり
この辺りはアレンジ・映像化の難しさかなぁ

沖田修一作品としては100点だけど、田島列島の原作の映像化ならちょいペケはつくかなぁ

あ、そうだ!
劇中のアニメがめっちゃ良かった!
邦画の劇中で登場するアニメってアニオタからすると「こんな作品はないよ」になりがちだけど、今作は実在しそうなリアリティと完成度でありながら邪魔をしない感じがバランス良かった

あと声優が異様に豪華
いいほっこりポイントでした


追記
すげぇ海外の意識高い人みたいな(そして自分が1番嫌いなタイプ)ことを言うけれど、子供はわかってあげないはあの原作の映像化なら結構ケチはつくんだよ
特に千葉雄大を起用したこと
千葉くん自体は悪くないけど男性→女性になった人を演じるのはどうだろう?と
トランスジェンダーの描き方が古いかな

というのは、原作の門司兄は絵柄もあって説明されなきゃ女性にしか見えない人なんだよ
それを明らかなトランスですよって感じに可愛い男性が演じてしまうと作品の味わいが変わっちゃうんだよね
みんなの中にあるちょっとした偏見を超えていく作品だから、原作は
大幅に改変してるからしゃあないけどさ

お父さんは宗教団体の指導者です→でも特殊能力はあるけど普通の人
やばい宗教団体です→普通のどこにでもある団体です

こういった偏見を打破する作品でもあって、映画はそこが弱い…というか、ほぼないのがなぁ、と
だから沖田修一作品ではあるんだけどあの原作の映像化としては微妙な評価になる