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スタートアップ!のmaverickのレビュー・感想・評価

スタートアップ!(2019年製作の映画)
4.3
2019年の韓国映画。おかっぱ頭にロン毛のマ・ドンソクという強烈なインパクトが衝撃的。このジャケ絵につられて観る人多数と思われる。


これはどういう作品なのか、内容も分からずに鑑賞した。マ・ドンソクの強烈なビジュアルに興味が沸いてのことである。コメディなのは明らか。軽い気持ちで鑑賞を始めたが、これが予想以上の良作。コメディとしての面白さはもちろん、落ち着いて観れる人間ドラマでもある。見た目も派手な個性的な人物ばかりだが、ぶっ飛んだキャラクター性だけでなく、一人一人が人間としてしっかり描けてある。人情を感じさせる、ほっこりする温かい話だ。

マ・ドンソクのインパクトが作品の大きなウエイトを占めているのはそうなのだが、物語そのものが深みを持って描かれており、それぞれの人物にもスポットライトがきちんと当てられている群像劇である。物語の主人公は高校中退の家出青年。この主人公の描き方がまた何とも魅力的なのだ。親不孝の不良息子。片親である母親に反抗ばかりしており、毎日馬鹿やって何となく過ごせればいいと思っている。金髪でいかにもヤンキーの風貌だが喧嘩はそれほど強くなく、劇中で何度も情けなくノックアウトされる描写が笑いどころになっている。情けなくてどうしようもない男に見えて、人情に厚い優しい部分にぐっとくる。この主人公を演じるのは、若手演技派の筆頭格であるパク・ジョンミン。『それだけが、僕の世界』ではサヴァン症候群の天才ピアニストを熱演し、共演のイ・ビョンホンやハン・ジミンからも称賛された。本作の熱演も見事で、この役を完璧に表現している。自然体で、まるで役が乗り移っているかのよう。冒頭から彼の演技に引き込まれた。

主人公の親友役を演じるのはチョン・ヘイン。映画『ユ・ヨルの音楽アルバム』、ドラマ『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』など、繊細さが光る若手俳優だ。本作でも、繊細でピュアな魅力に溢れている。赤髪の強烈なインパクトのヒロインを演じるのは、本作がデビュー作のチェ・ソンウン。これがデビュー作の新人というのが驚きである。いかにもヤンキー娘という雰囲気が役柄に全く違和感がない。元ボクサーという設定でアクションも披露しており、鋭い眼光と、垣間見える可愛さとで存在感は抜群だ。これで新人とは恐れ入る。彼女は本作で注目され、ドラマ『怪物』の出演でブレイク。そしてNetflix製作ドラマの『アンナラスマナラ〜魔法の旋律〜』で主演に抜擢。これまた期待の逸材の登場で、今後も目が離せない。このように本作は演技派揃いで非常に見応えがある。主人公の母をヨム・ジョンアが演じるなど、韓国を代表するベテラン役者らが脇を固めているのも注目ポイントだ。


人生いろいろ。上手くいかない下々の人たちにフォーカスを当てており、それでも生きていれば何とかなるさと、そう元気づけられる話になっている。『スタートアップ!』のタイトルが秀逸。人生に絶望しても、そこからまた始まる新たな人生を楽しめばいいのだ。大いに笑って感動して。ほんと韓国映画は良く出来ている。こんなコメディでもアクションのクオリティは高いし。マ・ドンソクの活かし方も心得ている。TWICE×マ・ドンソクの破壊力よ(笑)。コメディベースなので、普段韓国映画を観ないライト層にもこれはお勧め。とにかくいろんな人に勧めたい。思いのほか良作で、びっくりだった。
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