ろく

スケバン株式会社 やっちゃえ!お嬢さんのろくのレビュー・感想・評価

3.0
知られざる職人(ポンコツ)監督シリーズ~金子修介編~bonus track

金子というと「監督」のイメージが多いが初期のころは脚本が多い(特にピンク)。当時はとにかく本を書いたらひやうぃごーだったんでそのまま監督に就任したらしい。というわけで今作はあの小原宏之(桃尻娘シリーズ)が監督を務めるポンコツロマンポルノである。

まあ中身は金子だから大してないんだけど、よく考えるとなかなか面白い。そもそも70年代はロマンポルノも「闘う相手」が決まっていた。それは権力だったり社会通念だったり。そしてその中で新たな生き方としてロマンポルノは花開く。「㊙色情メス市場」や「女たちは濡れた」にあるのは刺さるほどの攻撃性だ。その攻撃性はそのまま当時の人たちが持っていた攻撃性かもしれない。

でも80年代はそれがなくなった。くしくも浅田彰の「逃走論」が出されたのが80年代だ。そこでは「性」はあっけらかんと楽しむものでありそもそも何とも闘わなくてもいい。この作品でも女子高生たちは実に気楽に「スケバン株式会社」を立ち上げ、性を売りながら人生を謳歌する。この作品や同じころ撮られた「桃尻娘」を見ると「権力」などないのがわかる。いやあるかもしれないけどそれは微細に僕らの中に溶け込んでいる(ミシェル・フーコー)。だからこの映画でも常に逃げればいい。楽しめばいい。生きればいい。享楽といえば享楽だ。でも金子は享楽の中に成功を見る。80年代という努力も信念もない時代に金子はこの映画を撮った。それは時代の流れだろうか。

そして、その享楽はそのまま金子の享楽だ。金子は信念のない監督だ。そして言われるままに「映画を撮ってきた」。だから金子は薄っぺらい。でもその薄っぺらさこそ僕らが通り過ぎた80年代や90年代だ。時代に要請されたまま金子は「どうでもいい映画」を撮っていき、「どうでもいい感じ」で年を取っていく。

でもそうなるのは金子自体そもそもわかっているかもしれない。この映画を見ればそれは歴然だ。「ほら綺麗な景色でしょ」そういって主人公のカップルは裸のまま東京の景色を見る。でもその景色はお世辞にも綺麗でない。薄汚れたスモッグのかかった東京だ。そのスモッグがかかった東京はそのまま金子だ。
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