HomareKarusawa

アンテベラムのHomareKarusawaのネタバレレビュー・内容・結末

アンテベラム(2020年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

ジャネール・モネイの一人二役、社会階層の分断がテーマのポリティカル・サスペンス。
特に印象的だったのは、
ラストの憤怒の形相の仁王像みたいなすごい顔芸と、
『プレシャス』のスーパーサイズ黒人女性の自由気ままな狼藉ぶりが爽快でした。

映画の前半、南北戦争以前の奴隷農場の過酷さが描かれます。トリックの前振りの段階であるために、主人公をふくむ登場人物がどういう生い立ちで何をしたい人なのか霞がかかったようで、共感しづらく感じました。
とはいえ主人公の心情や内面の描写に全然比重を置いていなくてもokでした。
重厚な歴史物だという期待をしながら観たのもミスリードに乗せられたんでしょうね。

エデンは強靭なメンタルを持っており、奴隷たちの精神的支柱です。
ヴェロニカは優しい夫と娘がいる社会運動家です。社会を怒らせることを飯の種にしていますが、本人は裕福で充実した暮らしをしています。社会階層や思想が違う相手からヘイトを集めがちな人物です。

ヴェロニカ(エデン)が忍従の果てに差別主義者をやっつける話なのですが、もう少し深読みをすることができます。

「Cracker!(貧乏白人め!)」というセリフと「意図的にターゲットを選別した」ということから、拉致され奴隷にされた黒人はおそらく全員富裕層です。
この映画は一般的な「黒人差別糾弾」のテーマと並行して、「豊かになってきた黒人が(利権を失い貧困化した)白人に「復讐」されることが恐ろしい」というホラーでもあります。
このことは「利権や利得のあるとされるマイノリティ」と「損ばかりさせられるという意識を持ったマジョリティ」の敵対関係にまでも拡大できるかもしれません。日本人である私たちも他人事ではなくなりますね。

その他の面白かったポイント
・ホットヨガが役立った!
・摘み取った綿花を燃やしてたね。製糸工程などないんだね。虐待だったんだ。
・敵対者の人物像が珍妙
 ・将軍「家父長制への反抗者のシンボル(成功したフェミニスト)をレイプしたい人物」
 ・将軍の娘(ラスボス)「意味不明なことをいって冷笑してくる同性」

追加
じつは『漂流教室』みたいに過去と未来が超能力で交信するトンデモ歴史SFを期待してワクワクしてました...
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