ヒノモト

ジョゼと虎と魚たちのヒノモトのレビュー・感想・評価

ジョゼと虎と魚たち(2020年製作の映画)
4.0
1986年に発表された原作小説をアニメ化した作品を観てきました。

2003年に実写映画化されており、こちらは私にとってとても大切な作品だったので、アニメという表現でどのように変わるのかを確かめてきました。

観終わった率直な感想は?
現代的でテンポが早く、シリアスな場面も含めて、色彩豊かで前向きな作品でした。

あべのハルカスとか海遊館なども舞台として設定されていて、現代の物語であることが強調されているように感じました。

しかもアニメーションならではのテンポ感とでもいいましょうか、展開がとても早くて、こちらも現代らしさの象徴とも言えますし、物語全体として、障害をもった方の自立にスポットが当てられている点も現代にピントのあったテーマをもった作品になっていました。

ジョゼの持つ幻想的な思想を絵画という形に落とし込んだ点も興味深かったです。恒夫と出会い外の世界を知るようになったジョゼは、画材店に行き絵の具の色の多さに驚くシーンが示すように、絵画のタッチが変化し緻密に奥深くなっていくような表現も面白く感じました。

ジョゼのキャラクターを憎めないイメージに魅せる事にも成功していて、2人が親密になっていくプロセスも明るく描かれ、その分後半のシリアスな展開になってからの障壁や葛藤もうまく織り込めているとは思いますが、恋愛映画としてはちょっと爽やかすぎるかなとは感じました。

実写版との比較をするつもりはありませんが、アニメ版では事象としては2人としてはお互いを尊敬し合うような間柄に落ち着いていくように見えるのですが、実写版では肉体的な関係性も含めて、異性だからこそ探り合う距離感のような深さを感じていたので、アニメ版での物足りなさは少しだけ残りました。

それによって、結末も真逆になっており、物語としては立派に成立しているので、アニメ版が劣っているという事はありません。むしろ、実写版に引っ張られずに、オリジナリティを持って新たな世界観を構築できている事、現代に即した物語になっている事が素晴らしいと思いました。
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