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プロミシング・ヤング・ウーマンのsahoのレビュー・感想・評価

4.7
久々にこんなパワフルで悲しい映画を観たなーーー。
カラフルな色使いとポップな音楽とユーモアと軽快な話術による一級のエンタテインメント作品に、男性優位社会への怒りのメッセージを込めた傑作。
タイトルも性的暴行加害者の男性に使われたPromising Young Man(将来有望な若い男性)を反転させた秀逸さ。
被害者の名前は公開されて未来は失われたのに、加害者はPromisingだからという理由で伏せられる。ふざけた世の中すぎる…。
「若気の至り」で許されるとでも思ってんのか?

いわゆる復讐ものだけど、今作は従来のリベンジ映画とは一味違う。
どう言い繕っても逃げ場なく観客全員に当事者性を突きつけてくる。
キャシーのことを「執念深い」「ちょっと引いた」という感想もちらほらみたけど、自分の身に起こったらそうは言えないはず。
それがこの映画を観た者が考えるべきことなんだと思う。
ここまで性犯罪を多面的に描く映画もそうそうない。男性にこそ観てほしい。

自分は幸せにはなってはいけない、とでもいうかのように不幸への道まっしぐらなキャシーの様子は見ていて胸が押しつぶされそうになる...。
キャシーの子供っぽいファッションから、事件以降、彼女の時間が完全に止まっていることも明らか。
最後のあの展開は、キャシーの最後の自分への罰だったのかもしれない。

45本目 / 2022
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