TaichiShiraishi

映画 えんとつ町のプペルのTaichiShiraishiのネタバレレビュー・内容・結末

映画 えんとつ町のプペル(2020年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

なんというか、クオリティは確かに高いのだがどうにも好きになれない映画だった。

とにかくいろんなメディアに出てきて西野が作品に込めたメッセージを語っていたが、公開前に色々種明かししすぎだし、それを見ていないにしても西野の人となりを少しでも知っていたら、本作が彼の個人的な物語に起因しているということが、あまりにも分かりやすすぎる。

作家の個人的思いがこもっている映画は確かにたくさんあるが、ここまでそれを恥ずかしげもなくアピールしている作品はなかなかないのではないか。そしてそれをセリフでも過度に説明していてうんざりしてしまった。

「夢を持つと横やりを入れられたり笑われたりするが、信じて突き進めばいつかは仲間が表れて最終的にかなう」

こういうテーマはいろんな映画で繰り返し語られてきたし、あまりにも普遍的なので別にマンネリ化はしないと思うのだが、本作はちょっとテンプレ化しすぎていると思う。

王道といえば聞こえはいいが、ステレオタイプにはまってしまっていた。それに夢を語ったら絶対に笑われるというわけでもないと思うので、日本中から叩かれたのは西野の伝え方が悪かったのではないか、と余計なことを鑑賞中に考えてしまった。

さすがのStudio4℃クオリティで世界観のビジュアル作りこみとアニメーションは文句なしの出来だったのだが、作品世界の成り立ちの説明や設定はちょっと納得いかない。

ずっと太陽が射さない状態で暮らしていたらどうなるのかの描きこみも気になるし、町の為政者が外界から鎖国状態にしている理由も中途半端に為政者側にも事情があることを描いているからラストで変革に成功しても「後先考えずそんなことしたらまずいんじゃないのか」とモヤモヤしてしまう。

盛り上げどころのクライマックスでも、邦画でありがちな主人公が演説を始めたらみんな棒立ちで聞いているというダメな特徴がガッツリ入ってしまっているし、その後の攻防も単なるどつき合いになってしまっていたのが残念。

志が高いのは間違いないが、結局爪の甘いところが目立つし、メッセージの伝え方が鼻についてしまう作品だった。
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