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17歳の瞳に映る世界のギルドのレビュー・感想・評価

17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)
4.7
【目で汲み取る”語れない想い”は本人でないと解決できない苦悩】
中絶に悩む女子高生が親友と共にニューヨークの産婦人科へ向かうヒューマンドラマ映画。

 中絶を題材にした映画で家族にも親友にも言えずに悩みを秘めている姿が辛くて、そことロードムービーのような帰路の見えない様に重ね合わせてる映画って感じがしました。

 本作の魅力を一言でまとめるならば、(1)目に見える世界の善悪が混在する自由&(2)目に見えない世界に暖かさと覚悟を内包する力強い傑作だと思います!

 まず本作は一貫して目で語る映画だと感じました😳

どんな事情か不明な主人公キャラハンのペンシルベニア州にいるシーン全般がそうだけど、母親になることに拒絶を示すように目を背く・母親になる運命から脱却して自由になりたいとガラスの向かい側の青空を眺める・性的な目で見る男性達に嫌悪感を抱くなど…目に強い表現が詰まっていて、そこが重厚な映画であるのを実感しました👀

これは主人公キャラハンだけでなく親友のスカイラーも同じで、強い絆であるのをセリフで語らずに目配せで表現するのも素晴らしいです!
スカイラーさんは魅力的である一方で、内向的なキャラハンの持つ悩みに対して深く干渉せずに適切な距離感もって接する姿に惹かれました。全体的に会話のやり取りが決して多くない作品であるけど、そういった演技が見応えあって楽しめました。

他にも様々な名作で演出に使われる鏡や窓も本作で効果的に使われていて、この変化を辿れるのも含めて名作にあるきめ細やかな演出が見どころだと思います!


 そんな目に見える表現に並んで対照的に目に見えない演出も魅力的で、この2つが混在した本作が傑作たらしめる所以かな。
映画の中でピアスを開ける際に自分の力で痛みながらも穴をあけるシーンがあって、そこに本作の持つ強い主題があると感じました。

中絶に悩む理由に男性の描写以外にもプロパガンダのような演出もあって、そこに善意と思っても実際は悪意に見えるなんともいえない空気感を表現していたと思います。
けれども目に見えない事は必ずしも悪い影響を齎す訳ではない、と希望を与える親友スカイラーとの関係とカウンセラーのケリー・チャップマンの存在が素晴らしいです。

本作の白眉で実際のカウンセラーを起用してるカウンセリングシーンがあって、そこのカウンセリングシーンにこそ中絶というのが善悪の二元論に落とし込まれるほど単純ではない、愛情・暴力・安全・尊厳のいろんな要素がグチャグチャに絡んでる真髄があると感じました。
徹頭徹尾、中立であり善と悪を示しつつもグラデーションある中絶に対して打破するには本人の痛みの伴う決断が必要でもある姿は心打たれましたね…


 本作は中絶という難しいテーマを扱いながらも多方面から切り込んで一歩引いて俯瞰的に見る映画でもあり、中絶で誰にも言えずに悩む女子高生の辛さを目配せで表現する映画でもあり、目に見えないながらも絆も暖かさは確かに存在するけど打破するには痛みを伴う映画でもある文句なしの傑作でした。
まだ見てない人は是非見ることをオススメします!

P.S.
ニューヨークでゲームセンターに行くシーンがあって、そこで自分がやってたゲームが映ってホッコリしてました😄
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