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わがままなヴァカンスのslowのレビュー・感想・評価

わがままなヴァカンス(2019年製作の映画)
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籠の中で不自由なく、知り過ぎた自由に囚われ、呪われる日を望みながら、煙を立てず、火花を散らし、知性と品性に燃ゆる花。目線を合わせ、光を集め、同じように咲くことは容易い。しかし、環境に左右されず、哲学を掲げ、自らを証明することを怠れば、全ては見破られ、咲き残り、夏の灰となってしまうのだ。

美しく開放的なカンヌの海辺に暮らす16歳の少女と、通り過ぎる夏の出来事。ミカエル・アースやパオロ・ソレンティーノのような、時の流れと潮の満ち引きに漂う。これは好きなやつだ。好きな役者がいるとか、そういう理由でなく好きになれる作品は貴重だ。嬉しい。劇中で鑑賞しているのがフレンチホラーというのも流石。官能的なジャンルに分類されてはいるけれど、個人的には少女の大人への過渡期を描いた上質なドラマだと思う。素晴らしい。
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