十一

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実の十一のレビュー・感想・評価

4.2
当時の討論の様子がそのまま映画に耐える密度をもっていることに慄く。今日、これだけの熱量を持った議論が行われていることがあるだろうか。ドキュメンタリーの構造としては、当時を振り返る関係者の証言で、当時の熱を再燃させようとするものであるが、同時に、敗北した革命の物語でもある。かつてを顧みる人々の今に、夢の果てを垣間見るのだが、夢を語ることの困難な今の時代、情熱のうちに過ぎた伝説ではなく、約束の場所を失ってなお、ここまで歩いてきた、血肉ある凡夫の道のりについてこそ、今、語るべきものがあるのではないか。自死を選んだ三島との対比において、今を生きると決めた人々の選択の重さもまた増すと思うのだ。
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