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ミナリのあのレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
4.2
配給 GAGA

A24らしい穏やかな良作

アーカンソーがどういうところなのかもよく知らないまま観たんだけど 土地がどう、とかいうことではなく外国人が見知らぬ・慣れない土地に移り住んできた物語

まず車輪が付いた不安定な家があの家族をそのまま表しているかのような表現で、ひよこを雄雌によってカゴに仕分けしていく作業も人種によって分断された彼らの立ち位置の比喩でもある
子供たちは子供同士で話すときは韓国語は使わず英語で話していることが面白いなと思った
自分たちがどういう人間なのか、ということをそこまで意識していないのに
白人の子から顔が平べったいと言われるなど 全部外部からの何かによって気づくことになる
それは親が韓国語で話しかけることも然り 韓国人であることを無理やり押し付けられているようにも感じた 子供は自分で自分のアイデンティティを選択できる力があるのに

おばあちゃんがセリを森の中に植えにいくのは ここでも成長できる場所があるのだよ、という意味もあるのだと思う
この作品は光がとにかく綺麗で 朝焼けの光、自然の中の光、野菜を保管している小屋のようなところに差す光、カーテンを締め切って遮断された陽、病院の無機質な光、そして最後のあの火など とにかくいろんな光が出てくるしその撮り方がどれも美しくて劇的に巧い
撮影監督誰かなと思って調べたら、ストレンジャーシングスのスターコートのバトル回を担当した人ということなのでめちゃくちゃ納得(モールのチカチカした感じ、独立記念のお祭りの光、自然の光、最後のお手紙部屋で読むシーンも全部良かったもんな...)
部屋の中を撮るのもめちゃくちゃ上手い人だと思う
自然や起こってしまった出来事に対しては抗えないけれど 最後は優しさがあって良かったな あれどうやって撮ったんだろう すごい

音楽は冒頭にクレジットされなければ聴きながら誰か当てるということをいつもするんだけど これはすぐわかったし良いスコアだった
(『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』の方)

『パラサイト』に続いてオスカー獲れるか?みたいな宣伝の仕方は間違っているしあんなにエンタメ性の高い作品でもなければ韓国の映画でもない(キャストが韓国人なだけ) でもやっぱりちょっと地味なので作品賞は難しい気がする
助演女優賞は獲れるのでは
撮影賞にノミネートされていないのが残念

アメリカンドリームの価値観は自分ではなかなか体験することないのでわからない部分も多いし 父親があそこまで頑張っていた理由も全部は理解できなかったけれど 一筋縄ではいかないよねっていう人生を垣間見ることができて良い作品だった
おばあちゃんが唐辛子みたいなものを持ってきたの、ああいうの絶対空港で引っかからない?とかそういう余計なことを考えてしまった でもやっぱり外国でなれない生活で母国のものを見たときの安心感や優しさってめちゃくちゃ沁みるんよな

あとキリスト教の描写がちょっとよくわからなかったな(知識不足

出てくるお料理が全部美味しそうだった キンパ食べたい
あ