えいがうるふ

ミナリのえいがうるふのレビュー・感想・評価

ミナリ(2020年製作の映画)
3.8
映像の美しさはさすがA24。広大なアメリカ中南部のド田舎の空気を伝えるロングショットと、その大地のように大きな夢を懐きつつも、限られた器の中でもがきながら新生活を始める移住者の韓国人家族。決して甘くない目線で捉えたその対比が鮮やかな佳作。

韓国の庶民派老母をやらせたらもはや右に出る者はいないのではと思わせるユン・ヨジョンの真骨頂とも思える恐ろしいほどナチュラルな婆ちゃん演技が染み渡る。そして、一見無表情なその瞳の奥に幼いなりに色々感じているのが伺える子役たちの演技もすごい。特に男の子は幼い頃の自分の息子を思わせるところがあり、反抗期らしくやんちゃなところも健気な様子も愛おしくてたまらなかった。脇役ながら存在感のある十字架男もすごくよかった。

散々な悲劇の末に目の前に広がるのは清流に青々と生い茂るミナリ(セリ)。その逞しい生命力とまぶしいほどの瑞々しさに心が救われる。往くも帰るも前途多難のボロボロ人生に静かに降り注ぐ希望の光。