日本制作ではないけれど、でも日本で公開されたこと、制作に関して圧力はなかったらしいことにほっとした。ユージンさんが見た水俣問題がひとつの側面でしかないことは理解しつつ、それでも日本が抱える問題を知る良い機会を与えてくれる映画だったと思う。
ユージンさんがこの問題を知らなければ、日本に来てくれなければ、暴行を受けてなお撮っていなければ、この水俣問題が世界に知れ渡ることは無かったんだろうと思うと、ユージンさんの行動はこの問題の大きな転換点だったのだと思う。それゆえあの暴行が死の遠因となったとは･･･暴行を加えるなんて、本当になんて酷いんだろう。
ユージンさんが撮ることを許可した人々もまた、その大きな転換点に携わった人々だったと思う。静謐な緊張感の中撮られた『入浴する智子と母』。その撮影時、ユージンさんに娘さんを預けたマサコさんの行動が自然と思い出された。あの時、マサコさんの気持ちを想像して、涙が溢れて止まらなかった事を思い出して、また涙が溢れた。
起こってはならないことが起こった時、それを無かったことにしてはならないと、エンドロールが伝えた世界各地の公害を観て、強く思った。
#106_2021
