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あの頃。の8637のレビュー・感想・評価

あの頃。(2021年製作の映画)
3.7
ふと出た「あの頃、楽しかったよなぁ」という言葉。何度も頭に浮かぶ「今が一番楽しいですから」という思い。記憶は頭の中で美化されていつか「あの頃」となるが、今はそれすら知らずに、今を楽しく生きている。
僕にはまだ「あの頃」がないけれど、彼らの楽しみで満ちて、少し寂しさのある関係に"中学10年生"という言葉はよく似合っているなと直感で感じる。

ハロプロはあくまでも"起点"として、この6人の青春映画を盛り上げた。観ていると自然に笑いが起こるし、"今泉力哉監督の映画"と考えるとめちゃくちゃ面白かった。
やはり今泉監督は確かなショットを撮るよね。虚空じみた残酷なカットや大阪の町が、ヨーロピアンビスタの空気感に合ってるなぁ。
あえて音楽による煽りやエフェクトを多用しない演出、またそれがありながら、長谷川白紙の劇伴の躍動が今作の脚本・冨永昌敬の映画の混沌にちょっと似てる気がした。長谷川白紙、もっと映画業界に乗り上げてほしい。

推しと仲間を兼ねた前半はとても良かったが、多シーンが混同していて分かりづらかった点と、遂にオタク生活から離れ"人生"を描いた後半が少し失敗だった。ラストシーンを躊躇いすぎている気がして3時間位の映画かと思った。
監督がTwitterで仰った「テンポ悪い映画」というのもあながち間違いではないのかも。失礼だけど。

それにしても一つのアイドルで一般人にここまでのコミュニティが誕生するのも凄いな。現在のオタクが劇中のようなガッツリのヲタ芸をするかは知らないが、そんな感じで、好きなものに対する愛情表現を大らかにできる風潮は、時代の流れだなと感じる。
帰り道、案の定ハロプロの曲を聞いて帰った。
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