回想シーンでご飯3杯いける

おらおらでひとりいぐもの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

おらおらでひとりいぐも(2020年製作の映画)
3.9
コロナ禍以降、会う機会がめっきり減っている母の事を考えながら、本作をチョイス、、、というセンチメンタルな気分を吹き飛ばす「おらだばおめだ」ダンスから幕を開ける。監督は「さかなのこ」が素晴らしかった沖田修一による2020年公開の本作は、沖田修一ワールドの炸裂の個性的な作品だ。

終戦直後に親が勧める見合いをすっぽかして上京してきた主人公の、青春、結婚、老後を、回想シーン中心で綴っていく。偶然であるが、お見合いからの逃避行を背景にしている点で、先にレビューした「ある夜の出来事」と共通している部分もある。

しかし、ここはやはり日本。しかも東北出身の彼女を取り巻く環境はかなり保守的で、主人公はなかなか抜けない東北訛りにコンプレックスに持ちながら、引っ込み思案な青春時代を過ごすのである。

主演の田中裕子は「ひとよ」と同じく、マイペースな老女役を好演。加えて彼女だけが見えているイマジナリー・フレンドが多数登場するのだが、彼らにあてられた役名に注目して欲しい(エンドロールを見る前に調べない方が良い)。特に冒頭で「おらだばおめだ」ダンスを繰り広げる濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎の3人組が最高過ぎる。どこまでが仕事で、どこからが趣味でやっているのか良く分からない、脱力系の演技。「さかなのこ」でも見られた手法の原点なのかもしれない。

さ、皆さん御一緒に
「おらだばおめだ、おらだばおめだ、おらだばおめだ♪」