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トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャングの8637のレビュー・感想・評価

3.4
この物語に真実は含まれていない。史実を語った伝記でありながらこの語り出し。真実は国家によって捻じ曲げられて、消えてしまったのだろうか。乱暴な映像美を映し出す画面は次第に窮屈になっていく。そのさまは衝撃的。道を踏み間違えていなければ、と環境を呪うも仕方ない。今は今で楽しいのだろうな。

この時代、戦える男は家族からは慕われるが、刑務所の厄介になったりする。金持ちの権化なら反逆者に恨みを買って殺されたりする。結局誰も正義なんて知らないし、大切にされてこなかったのかもしれない。今殺さなきゃまた付け上がるのに。それを判っているのに一線は越えない。

ギャングは自分に嘘をつく。どれだけ愛されても孤独な殺人思想家・ケリー。幼い頃から闘争心を叩き込まれ、普通の暮らしでは生きづらかった。あの森での決心シーンからのジョージ・マッケイの本気度は凄まじい。顔が覆われていても、その佇まいでわかる。

PG12で描けるような人体欠損描写じゃなかった。人間の身体はあんなにも脆くて、玩具のよう。そんな弱肉強食の世界には虚しさばかりが付き纏った。特にラスト2シーン。悪巧みな笑顔と誰を讃えてるか分からない拍手が本当にトラウマだった。


追記:ラッセル・クロウ...笑
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