バリカタ

息子の面影のバリカタのレビュー・感想・評価

息子の面影(2020年製作の映画)
4.5
逆「母を訪ねて三千里」ではないですよ。


いつも通りに前情報なしで鑑賞です。息子を探す・・・なるほど「母をたずねて三千里」の逆か・・・と勝手に想像してました・・・笑っちゃうくらいに全く違う作品です。はい。
「国境には悪魔がいる」観賞後に見た作品ポスターに描かれているコピーの一文。そうなんです、主題はそこなんです。本作は、きっと今も存在する社会問題(国家問題かな?)を描いたハードな作品なんです。

オープニングから続く緊張感はなんなんだろう?緊張感の種類は見始めと終盤で変わります。それはぜひ鑑賞して味わってほしいです。そしてなかなかの絶望感まで味合わせてもらえます。こんなにも綺麗で詩的な映像や描写で紡がれているのに、ただ緊張感と絶望感を増幅させるものでした。どこにでもいる一人の母親の目線で淡々と描いているからこそドスンと伝わってくるのでしょうね。こんな気持ちを作品内舞台の地域の方が日常的に味わってると考えると本当に恐ろしくてたまりません。そしてクライマックス・・・・これ、かなり辛いです。ちょっと心が「ポカン」となりました。それほどショッキングです。心張り裂けそうってこのことかと。

医師ムクウェゲさんの映画を見た時も思いましたが、貧困がもたらす政情不安や強大な暴力が生む悲劇は止まらないです。このような作品を見るたびに思うのは、そんな日常が存在する世界があるんだと言うことを知るべきだと。なぜ生まれているのか?なぜこうなってしまうのか?知ることから始まることもあると思うんです。美しい映像で詩を語るように突きつけられる辛い現実を、僕たちは受け止めなくてはならないのだと思うのです、一人でも多くの方が。