Hideko

83歳のやさしいスパイのHidekoのネタバレレビュー・内容・結末

83歳のやさしいスパイ(2020年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

原題: El Agente Topo
英題: The Mole Agent

83歳のセルヒオ。妻を亡くしたばかりだが、生きるのに意欲的で新聞広告で見つけたある老人ホームの内定調査の職を得る。ホームにいる母親が虐待や犯罪の被害に遭っていないか調べて欲しいというもの。ガラケー使いの身から、探偵事務所でiPhoneの使い方を習うくだりが微笑ましいというか、可愛らしいおじいさんですね。自分でもフルに使いこなせていないと感じることがあるので、なんとかマスターしたセルヒオはすごい!まだまだ若い知能と体は歳を重ねると本当に宝物。

優しく思い遣りのある人柄と明晰な頭脳、ハンサムな風貌でたちまちホームの人気者に。

ある老婦人がセルヒオに恋をします。ああ、なんて素敵なんでしょう。幾つになっても女性は女性。男性は男性。勿論良い意味で。その彼女の顔がセルヒオに恋心を持つことでどんどん輝いて明るく美しくなっていく過程がとても印象的。

セルヒオ、内定を続けるうちに、ある結論に辿り着きます。
「入居者はみんな孤独だ」「面会は少ないし家族に捨てられた人もいる」「孤独ほどつらいものはない」「ホームには犯罪など一切なかった」「ターゲットは手厚い介護を受けてる」「だが彼女に本当に必要なのは家族の愛情だ」「今回の仕事に意味はあるのか」「このような調査は本来依頼人が自ら行うべきだ」「そうすれば母親にもっと寄り添えるだろう」

自分は経験が無く、それこそテレビのドキュメンタリー番組やニュース、知人の話などからしか分からないのですが、親御さんを老人ホームに預けること自体が経済的にも困難なご家庭も多く、また心も激しく引き裂かれる思いであると想像しています。そして面会も忙しい生活の中、なかなかままならない場合が多いのだろうと。

本作の老人ホームのご老人たちのお顔を見るにつけ、とても悲しくなりました。

そして本作がドキュメンタリーであることに驚きます。老人ホームの許可を得て、スパイとは明かさずに3ヶ月間撮影されたとのこと。

老人ホームのご老人に限らず、孤独に生きている人は沢山います。年齢を問わず。そうした人々は家族の連絡を待っています。会うのが無理なら電話か、今の日本ならメールやLINE などでも。

セルヒオの亡くなった奥さんはさぞかし、幸せであっただろうと思いますね。

本作、心温まる作品であると同時に、とても切ない作品でした。
Hideko

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