NAOKI

ナイトメア・アリーのNAOKIのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
3.8
「宿命なのだよ…」

デルトロだね〜とワクワク(笑)

彼の「シェイプ・オブ・ウォーター」アカデミー賞獲ったので名作!って思っている人多いと思いますが(確かに名作だけど)実に奇怪な映画だったってこと…覚えてますか?
主人公の地味な感じの女性イライザが朝のルーティンとしてお風呂オナニーから始まるわ、猫を頭から齧るわ、銃槍に指突っ込むわ、もう大変…でも描いているのはなんと「愛」…
アカデミー獲ったけどね(笑)

デルトロさんは何を描いても自分の趣味を炸裂させないと我慢できない典型的作家型監督…

パシリムだってヘルボーイだって普通にもっとまともに作れば万人に受ける映画になるはずなんですが…おれは仮に映画が面白くなくなってもそのデルトロ節が炸裂してる奇怪な世界観を愛してやまないわけです。

「ナイトメア・アリー」

見せ物カーニバル一座…おれが子供の頃までは夏祭りの出店に見せ物小屋があって、奇形の障害者やインチキ(おそらく)獣人などが檻に入れられて見せ物にされ子供たちのお小遣いを巻き上げていました…それを思い出しました。

この映画の登場人物たちは皆デルトロの分身だと言えます。血の通った実在感で物語に引き込まれ最後まで酔いしれました!

ご存知の通りストーリーあまり面白くはありません(笑)とにかくデルトロの世界観を味わう映画なのです。

あの知的で芸達者で色男のブラッドリー・クーパーがいきなりトニ・コレットにチンチン掴まれて次の日から彼女のためにまるで道化のように客たちから小銭を集めている…「こいつどうしようもねえなー」感はデルトロ映画の真骨頂だと思いました。
この男…頭が良く「華」がありエンターテイナーの才能もあるのにその生い立ちのせいか「卑しさ」から逃れられない…見ていて間違いなく破滅していくのがわかる…

これは才能もあり演出力や美的センスにも秀でているデルトロ監督がその「趣味」ゆえに奇怪な面白くない映画ばかりを作り続ける彼の「癖」に通づるものがあると思いました。


デルトロ監督!なんでもっと綺麗でまともな映画を作って老若男女が楽しめるようにしないんですか?!

そう聞かれたデルトロさんは泣き出して…やがてそれは笑い声に変わり…こう言うだろう…

「宿命なのだよ」
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