シネマの流星

無頼のシネマの流星のレビュー・感想・評価

無頼(2020年製作の映画)
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8年映画を撮らない間に刀が錆びついたか、もはや令和にヤクザ映画を撮るのは無理なのか。

井筒監督の昭和への想いが強すぎ、映画の世界に入り込めなかった。

『無頼』と言うわりには家庭崩壊も無ければ最後もハッピーエンド。昭和の熱を描こうとしながら、令和のぬるい映画にしか思えなかった。

「アメリカ社会の光と陰を描いた」ゴッドファーザー2の日本版を作りたかったようだが、映画がフォーカスすべきは人。

GF2はコルレオーネを通して社会が透けていたが、はじめから「昭和」や「社会」を描くとトロピカルジュースのように何を飲んでいるのか分からない。

時代を描くのはNHKのドキュメンタリー番組で十分。

主演の松本も演技は良いが、無頼の匂いがしない。あちこち女を作っていたが、本人からは一途で1人の女性を愛する男に見えてしまう。

黒澤明が時代劇を撮らなくなったのは「今の役者が演じても侍に見えないから」

ヤクザ映画も同じかもしれない。

何より気になるのは柳ゆり菜。最後は50歳くらいの役のはずだが、歳をとらないのはなぜ?二十代にしか見えない。

あえて狙ったのか、事務所からオバチャン役はNGが出たのか?

濡れ場も胸を見せなかったし、どこか井筒監督の中で遠慮があった気がする。芸事において遠慮は最大の敵だ。配慮は深く、遠慮はしない。それが最高の芸術。

井筒監督には奈良を舞台にリベンジしてほしい。
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