821

ファーザーの821のレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
4.0
とてもイギリス、ロンドンを感じる作品でした。作品の主題から、エンドロールでの文字の現れ方まで。一度しか行ったことがないけれど、無性にロンドンを感じた。超高齢化社会となり誰もが向き合う「老い」について、当事者の目線からその孤独、混乱、喪失感が描かれる。時の流れと共に、何かしらの形で受け入れなければならない「老い」について新たな捉え方をするきっかけとなる作品でした。
認知症は人を猜疑的にし、頑固にもする、この性格の変化は病気のせいであり、その人本来の性格の現れではないと聞いたことがありますが、それも心底納得してしまうような作りになっていました…。

とにかくアンソニー・ホプキンスの演技に胸が詰まりましたし、父の事を大切に思う娘を演じたオリヴィア・コールマンにも。自分の両親がまさにアンの世代なので、親の姿を見ているような気持ちにもなりました。

まだ私は直接的に「老い」と関わっていく世代ではないのですが、これから両親が歳を重ね、自分もやがて「人生の夕暮れ」に向かってゆくことになる。その未来について思わず思いを馳せてしまう作品でした。
(ポスターに「人生の夕暮れと〜」のキャッチコピー、素晴らしすぎやしませんかね。)
アンソニーが最後に絞り出した言葉が忘れられない。あのセリフのシーンは、私にとって今年1番のシーンになりそうです。
821

821