優れたアメリカの短編小説のように、全体のトーンとしては起伏も少なく淡々と主人公二人の人生の一コマを魅せてくれました。
よくある小さな話ですが深みを感じました。
人種差別、貧困問題、世代間の相違などの社会問題ではなく、それらを突き抜けた個に絞った非常に良く出来た作品だと思います。
題名がいいですね。『The Last Shift』
主人公のリチャード・ジェンキンス演じるスタンリーの「最後の仕事」(last shift on nights)と「窮策」のダブルミーイング。
↓ここからネタバレとなります。
仮出所してばかりのジェボンへの引継ぎは、38年間真面目に働いてきた自分との違いに戸惑いながらも 引越しの期日は迫って来ます。
貯めていた金銭を不幸にも失い、店の売上金を着服して母親に会いに行きます。
この件でジェボンは疑われクビになりました。
伏線は、二人は時代は全く違いますが同じ高校通っていて、スタンリーが通っていた時に起こった黒人青年暴行死事件。
加害者はスタンリーの同級生で彼は暴行を目撃していましたが、誰にも言いませんでした。
彼は真面目で正直者だと周囲に思われてこの町で生活してきたのでしょう。また、自分自身もそう思ってきたのだと思います。
店の金銭着服も誰にも言う気はありません。それでもこの町で生きて行くしかないでしょう。
ジェボンが希望を持ったラストですがその一押しが別れた彼女の「あなたは仕事も学校も向いてない でもきっと上手く行く」にあるのかもしれないのも上手いと思いました。
何方も責める気にはなりません。
ラスト
スタンリーは周囲に埋もれ、自ら助けの手も出しません。
それに対してジェボンは世の中はこう言うものだと見切って自分でなんとか生きていかなくてはと思っている 二人の明確な差異の落としどころに感銘をうけました。
良かったです。