良かったです。
居心地の良い椅子でいつまでもジーッと見て聞いていたい映画でした。
私はよくネット映画でつまんないな倍速にしようかでも字幕読めないし止めるとなんか損した感じだし みたいなグダグダ感が続く作品でした。
男性モデルのオーデションの撮影から入ります。
主演の一人ハリス・ディキンソン(「ザリガニの鳴くところ」の嫌な奴役)演ずカールはイマイチのモデル。テストで「Triangle of Sadness」(15分でボトックスで修正できる、眉間に形成される心配のしわに対して形成外科医が使用する用語by監督)の指摘を受けます。
彼は彼女のヤヤ(チャールビ・ディーン/この方 細菌性敗血症で亡くなったんですね。驚きました)とレストランの支払いで揉めます。古今東西アルアルです。
支払いを終え帰りのタクシーでも続きます。会話はジェンダー問題にも及びと言ってもそれ以上にはなりません。ワイパーの擦れる音。まだまだホテルのエレベーター、寝室まで続きます。
ヤヤ「セレブと結婚したらモデルを辞める。あなたはそれまでのパートナー」
カール「セレブより僕」
でその夜は終わり。
至高ではない。最高でなくていい。
この映画の全体のトーンです。
そして2・3章で
いよいよ『ファッションの世界と超富裕層に対する「野生の」風刺であり、「資本としての外観」と「通貨としての美しさ」を根底にあるテーマ』by 監督
に入ります。
豪華クルーズの船上はセレブばかり と思ってはなりません
張り切りリーダーが率いる接客係。の他 酔っ払い船長。機関士。清掃員。などなど。
そうです。世の中セレブばかりでは成り立たない。
一人一人を上手く描いていきます。
ディミトリ夫人ベラ(サニーイー・メルズ/本物のドイツの伯爵夫人)に泳ぐよう要求された接客係のアリシア(アリシア・エリクソン/スウェーデンの歌手)は上司に相談する。その結果 全員海に飛び込むことに。
そのロシアの大富豪ディミトリ(ズラッコ・ブリッチ/「2012」でもロシア大富豪を熱演。クロアチア系デンマーク人)は嵐の中、船長(ウディ・ハレルソン)とアネクドートぽいやり取りから船内放送へと続く。
クルーザーは、元オナシス家の「クリスティーナO 」。
海はギリシア カタコロン付近。
ギリシアでもタコを食べる。出発前に引き上げた箱には生ダコが、タコはあしが早いのです。気をつけましょう。
沈んだ船から生き残った数人は離島(ロケはギリシア チリアド海岸)に辿り着く。
興味深い邦題だとは思いますが
「逆転」としたのは意図的に配給会社がヒエラルキーを想起させているのか宣材に書いてあるのかは知りません。
ここは素直に「Triangle of Sadness」の終章として捉えたい。
「Triangle」は三角関係との意味もある。
ヤヤは第一章でセレブとの結婚を望んでいると言っていました。
逆にカールがセレブの下に囲われることとなる。
ヒエラルキーが上になろうとも、満足感は得られないと今まで散々見せられてきている。
モテる?一緒に写真に撮れても、つまらない話しか出来ない。
それを見て楽しもうにも、自分自身が不安になる。
スタッフを海に入れて、タコ料理は傷んでしまう。
自分が作った手榴弾で、船諸共沈んでしまう。
買い取ると豪語したロシア富豪の奥様は亡くなってしまいました。
象徴的なのは
つまらない嫉妬で船員がクビになる。船から降ろされる場面を見ていたカールの心情。
たとえセレブであろうとも世の中ままならない。
酒で誤魔化そうにも、離島にはありません。
慰めになるのはやっぱり愛だね。
たとえ至福であろうとなかろうと。
ロバ(王様の耳はロバの耳)を殺して一気に危機感を感じる。
意外に山登りは苦手でした。
ヤヤは「私は人をコントロールするのが上手い」と言ってましたが、ここは素直に 思いやり ととりたい。甘いか?
そしてカールは走る走る。
走る事も出来るんだとのラストでした。
雑音と素敵な音楽が効いた
とても満足な映画でした。
久々に北欧ハードロックを聴きたくなりました。
以上です。