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コレクティブ 国家の嘘のバナバナのレビュー・感想・評価

コレクティブ 国家の嘘(2019年製作の映画)
3.0
2015年、ルーマニアのクラブ“コレクティブ”でライブ中に火災が発生し、生き残った負傷者180名のうち病院に搬送され治療中だった負傷者が次々に感染症にかかり、64名も死亡する事件が発生した。
その異常な数の多さにルーマニアのスポーツ紙が調べ始めると、病院内で使われていた消毒薬がなんと1/10まで薄められていた事が分かり、当時の内閣が総辞職する大事件に発展していく…というドキュメンタリー。

日本の感覚からすれば、例えば脳梗塞になって救急で緊急搬送されても、搬送された病院がハズレで、ずっと廊下にストレッチャーに乗ったまま放置され、体に麻痺が残ってしまった知り合いの方がいるのだが、
病院がハズレの話なのか?と第一印象では思っていたのだが、
映画では、火傷で搬送された患者があらゆる病院で大量に亡くなっているので“病院がハズレ”だったという様な問題ではなく、消毒薬の販売元の会社が最初からその薄さで売っていた様だ。

しかし、さらに映画を観て行くと、病院院長と製薬会社の汚職も発覚し、トップの不正が病院内の職員のやる気と連動しているのか、なんと入院中の熱傷治療中の患者さんの体に蛆が湧いていた。
私は『はだしのゲン』の漫画の中で、原爆の熱傷の苦しみの中、治療されずに蛆が湧いている人がたくさん出てきていたが、まさかこの歳になって、戦地でもないのにそんな様相の映像を目にするとは思わなんだ。

きっとルーマニアというと元東側の貧しい国だし、こういう汚職や不正は日常的にたくさんあったのだろうと思うが、
日本でも1980年代にはHIVに汚染された血液製剤を販売していたミドリ十字事件や、2016年にも熊本の化学及血清療法研究所が承認されていない方法で血液製剤を作っていたりと、
消毒薬という単純ではない薬品で実際に不正事件が起こっているので、決して対岸の火事ではない。

大火傷を負った被害者の方で、ケロイドが残った体で写真集のモデルになったりと精力的に活動されている女性が居たが、世界には凄く強い人が居るものだと思いました。
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