無限ループの住宅街ヨンダーに隔離されたカップルの顛末を描く不条理スリラー。冒頭の気味が悪い雛鳥の模写から終焉まで、絶えることがない不穏な空気感が漂い続けます。
全く同じ家が無数に整然と建ち並び他に人は居ない無機質な街並みで、昼は常に晴天で細切れの丸っこい綿雲が同じように浮かんでいる。その個性がない景色に事実上閉じ込められたトム(ジェシー・アイゼンバーグ)とジェマ(イモージェン・プーツ)が見る生地獄はかなり辛辣です。
食料や生活用品はダンボール箱に入れられて自宅前に届き、電気も通っていて衣食住には困らないので仕事をしなくても生きて行けるのですが、その実態は人質の何者でもなく、ある時に家の前に置かれたダンボール箱に入れられていたのが男の子の赤ちゃんだったことから恐ろしくもザワザワする展開に拍車がかかります。そして赤ちゃんが入っていたダンボール箱に書かれていたメッセージがリンクする結論の容赦のなさは、かなりヘビーです。...と云う感じで設定云々は際立っているのに、どうにも物語りの見せ方が平板で盛り上がりません。何とも残念です。
余談ですが“赤ちゃん”が成長して“少年”になった時の佇まいが『ブラジルから来た少年』に出て来る“少年”に似ていると思ったのは私だけでしょうか？だとしたらイロイロ侮れない作品だと別の解釈も生まれてくるのですが...
