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のぼる小寺さんのブンのネタバレレビュー・内容・結末

のぼる小寺さん(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

・キュン系青春映画っぽくない感じが好き
普通に、近藤くんが小寺さんを好きになって、なんとかお近づきになりたいと思って、そのために自分も何か頑張らなきゃな、ってなる青春映画。っていうあらすじだけど、「告白」「ドキドキデート」「キスされちゃう?」「思わせぶりな行動にドキドキ」「えっ?実は両思い!?」的なポップカラーなイベントが全く起こらない。(外野で「告白」は発生してたけど)ところが凄くよかった。最後まで暖かくて癒しの世界で自然にみることができてずっと「素敵だな〜」っていい気持ちのままみることができた。そもそものスタート地点が、小寺さんのことが好きだからと言ってボルダリングの部活に転部するのではなく、そのまま自分の部活の卓球を頑張る、で、ピンポン球が逸れてとりに行った時だけにチラ見するっていう距離感た最高にいい!!!!いいよね。そのトーンでずっと続いていく感じが良かった。(キュン系も、それはそれで好きだけどね?)

・小寺さんが背中を向けた意味
今回この映画を一緒に見ていた人の感想に「最後、急に急接近する意味がわからない」「俺のことを見てくれ、って突如命令口調になるいみがわからない」というのがあったけれど、確かに、あれなんで急に背中合わせなったんだろ??って私も少し疑問に思ったけど、「ちゃんと伝えようとした人の思いを、ちゃんと聞いてみたい」という真っ直ぐな気持ちの現れでは?という感じがした。そう指摘されるとまぁ、背中合わせはやりすぎのように見えるけど、なんか、真剣なことが伝わって、何か応えたいというか、小寺さんなりの表現というかコミュニケーションのキャッチボール的に出たものなのかな?というふうに解釈した。「俺のことを見てくれ」って言われて「なるほど、見よう」と考えた結果、背中合わせにしてみたということ。

・「夏が静か」と感じる小寺さん
それよりもうちょっと前のシーンで夏が好きっていうシーンがあるじゃないですか。小寺「夏は静かだから好き」、近藤「えっ?なんで?セミとかいろいろうるさいじゃん?」(小寺さんが目を閉じてしばらくの沈黙)小寺「・・・ね?静かだ」、近藤的「・・・?よくわからないけど・・・」っていうところ。ここもなんか独特でスキーなシーンなんだけど、小寺さん独特の感性が描写されている。だから、背中合わせも、その感性のひとつなんじゃないかなー。と思った。「見てくれ」って言われた時に、心の中から溢れ出す何かを感じたから、「近藤くんの何か、この伝えたいことを受けとろう」という感性の結果、背中合わせになった・・・的なことで私は解釈することにしました。

・群れないけど、孤高ではない
とにかく「来るもの拒まず」な小寺さん。清らかなんだけど孤立じゃないし、孤高でもないのよ。クールなのとも違うの。話しかけられたら嫌な顔せずに素直に人の話聞く。ギャルに「ネイルできてすごいね」とか、近藤くんに「卓球頑張ってね」とか普通に。先生にもたてつく感じもなくて、ただ単に思ったことをいうだけ、ていうところが痺れるよね!!!!その点、自分は、結構人からどう思われたいとか、そういう雑念にまみれてたから・・それでも楽しかったけれどね・・。なんか悦に入るというか、ドラマとか、漫画に影響されてなんか正義とかあるべき姿みたいなのに影響されてたな・・・・とか恥ずかしい。記憶を思い返すと。「私がこのクラスを引っ張っていくんだ!」「みんなをまとめるんだ!」的な。いや、それもいいんだと思うけどね。

・穏やかな「青春映画」
なんとなく、もう自分も高校時代って20年ぐらい前の話だから、高校生の青春ものをみたって、どうにもならないだろうな・・・という工藤が出ているということ以外にあまり期待を持たずにみたけれど、意外とよかった!!!

常に光が差すひだまりな体育館の中で、とにかく過剰なことが起こらずにみんなが淡々と部活をしたり趣味のカメラをしているのがよかった。ベタだけど、ギャルが登場してギャルと不思議ちゃんの工藤演じる小寺さんとが自然に打ち解けたり、ベタだけど地味メンが登場して小寺さんに思いを寄せつつ部活を頑張ってほんのちょっとずつ自信をつけて表情が明るくなったりとか、ベタだけど、地味女子が登場して仲間には言えないカメラ趣味に自信を持って取り組むようになってギャルとも交流するとか、「えっ・・・普通にいい・・・みんな可愛くて好き」となった。もう一人の主役の伊藤健太郎が演じる近藤くんも、地味メンよりもちょい地味じゃない地味メンだけど、部活の卓球を頑張って、いつもつるんでいる仲間に「お前だけ本気出しちゃって・・おもんねー」的な扱いを受けつつも、最後には仲直りできて「よかったねぇ・・」ってほっこりできたし、総じてみんな癖がないというか、普通に素直に見れてほっこりできた。とにかく体育館に柔らかい光が差し込んでて教室の中も明るくて、体育館の隣にある緑生茂る空間とかも瑞々しい感じがあって、どのシーンも爽やかで軽やかで、心が癒される、優しい空間で安心しながら見続けることができたので、そこが気に入った。最近心が荒んでいたので、何見ても「けっ・・おもんねぇ、くだらねえ・・子供だましじゃねえの?」みたいな感想しか出てこないのでは?という自分への疑念があったけど、それが晴らされて一安心した。
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