ノラネコの呑んで観るシネマ

デリート・ヒストリーのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

デリート・ヒストリー(2020年製作の映画)
4.3
コメディ作品では珍しくベルリン銀熊賞に輝いた作品だが、なるほどかなり面白い。
フランスの郊外の低所得者むけ住宅地に住む、3人の男女の物語。
バーで出会った男にセックスビデオを撮られ、脅迫された女。
ネットショッピングのやりすぎで、借金漬けになった男。
フランス版ウーバーの運転手で、どんなにサービスしても星一つしか貰えない女。
彼らに共通するのは、ネット社会に翻弄されているところと、金に困っていること。
そして情弱で欲望に弱いダメ人間。
しかし三人は、必ずしも現状に甘んじている訳ではないのだ。
彼らは数年前からフランス全土で吹き荒れているイエロージャケットのデモに参加していて、そのことを誇りに思っている。
意識高い系なのに人生思い通りにならない理不尽さが、彼らを消したい過去に対する、むっちゃアナログな戦いに駆り立てる。
ネットに人生を左右されていても、人生に本当に大切なものは”GAFA “のクラウドには存在しない。
そのことにようやくの気付きを得るまでの物語。
ダメダメ三人に、いつの間にか自分を重ねてる愛すべき作品。