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セイント・フランシスのSPNminacoのレビュー・感想・評価

セイント・フランシス(2019年製作の映画)
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高齢出産ギリギリとされる34歳ブリジットは、引け目があってもミレニアム世代ほどエモくなれず、かといって自分の親世代ほど前向きにさばけず、現代的価値観と古い価値観の狭間世代。彼女を中心に描かれる各世代、男女、女同士の差異がグラデーション豊かで面白い。
ブリジットがナニーをするフランシスのママとマミーは少し上の世代。保守的なカトリック信者で、弟を産んだママは産後鬱で憔悴してる。血まみれでも優しく寄り添い読み聞かせもするけど「付き合ってる気はない」26歳のジェイスは、ブリジットにとってのナニーみたいなもの。
でも6歳児フランシスとブリジットは、6歳離れた弟がいて率直なところがよく似てる。特に「はあ?何それ」って眉間にシワよせた顔が同じ!映画ではこの「はあ?」モーメントが頻繁に出てくる。そして出血、というか漏れる血も。
母親は聖母じゃないし、女の血は穢れでも神聖でもなく、ただ不用意なタイミングで面倒なことになるから対処するだけ。そして女同士なら必ずしも連帯共感できるものではないが、子どもを産んでも産まなくても味方になれる。ブリジットにはフランシスや赤ん坊を世話しながら母性が芽生える…よりも、フラットな愛とシスターフッドが育まれるのが気持ち良い。
ブリジットにもたらされた懺悔と赦し、小さな奇跡。それは家父長制もジョーン・ジェットも知らない、ママが2人いる時代の子ども、聖フランシス(彼女もちょっとだけ血が出る)。神や社会通念を信じなくても人を、フランシスを信じればいい。
その転機は池に落ちたフランシスを引き上げた(いわば洗礼)ところだが、思えば出会った最初にブリジットは電話を介して2人きりの「告解部屋」にいた。ジェイスにも電話で告解するが、それが通じたかわからない。でも、そもそも罪なんかあるだろうか。あたしのせいだって?はあ?
大人と子どもの身体、他人と自分の身体を様々に重ね合わせて、または身体から排出して、やがて自分の身体一つになるブリジット。主演・脚本ケリー・オサリヴァンが眉間にシワを寄せたり表情を変えるたびグイグイと惹きつけられたし、くちゃくちゃでプニプニの天使みたいなフランシスちゃんの動作一つ一つが尊かった。
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