みかんぼうや

ペルシャン・レッスン 戦場の教室のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

4.3
これは!兎にも角にも設定とストーリー展開が圧倒的に面白い。ホロコースト物の実話と短編小説から着想を得たフィクションということで、実際にここまでのことがあったわけではないようですが、常に何が起きるか分からない緊張感、先の展開やラストが知りたくてたまらなくなる作りなど、単純に一つの映画としてたまらなく面白い。バッチリと伏線回収するラストも完璧。ホロコースト物のフィクションの中でも屈指の良作、いや傑作でした。

内容は、ナチスに捕らえられ強制収容所に送られたユダヤ人の青年ジルが、ユダヤ人ではなくペルシャ人であると偽るところから始まります。たまたまその収容所のドイツ人大尉がペルシャ語を学びたかったことから、ジルは生かされることに。しかし当然ペルシャ語を話せないジルは、素性がバレないように自ら創作した偽のペルシャ語をドイツ人大尉に教えていくのですが・・・

このユニークな設定で最初から話に引き込まれますが、ここからの展開も秀逸なので、全く飽きがこず、あっという間の2時間強。演出力も抜群で、わざとらしさがなく、しかしエンタメとして観やすく、この魅力的なストーリーラインを全く邪魔することのないバランス感があります。

ホロコーストが舞台となっていることもあり、もちろん反戦的メッセージもしっかり盛り込まれています。しかし、生き延びる打開策を“言語”と“記憶”をキーにして描いていったのはとてもユニークですし、結果として、それが非常に皮肉な形で伏線回収されるなんとも見事なラストに繋がっていきました。

これは、ホロコースト物の作品が好きな方には、絶対に観ていただきたい作品です。「シンドラーのリスト」や「戦場のピアニスト」のような重厚リアル系というよりは、「縞模様のパジャマの少年」や「サラの鍵」などを観た時の感覚に近いかもしれません。
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