グラビティボルト

みんなのヴァカンスのグラビティボルトのレビュー・感想・評価

みんなのヴァカンス(2020年製作の映画)
4.5
そんなハズないのに、自然光や演出されていない風までもがフレーム内のドラマや人物の動きに合わせてくれているかのような幸福感に満ちた圧倒的な傑作。
一夏の思い出の輝きと関係性の推移にジタバタする男女の痛々しさも真っ直ぐ撮れるから凄い。
ラストショットの視線の交換も凄い。

もう冒頭のエリック・ナンチュアリングが夕方〜夜の街を彷徨うショットからして良いんだよね。
「孤独」みたいな詩的な表現にならない程度にラフで、けれど見通しの良いショットの連鎖でボッチな男が
アヌマ・メサウデンヌに一目惚れするまでを捉える。

男女の関わり始めは撮って、その関係性がどのように発展したのか?は大胆に省いてしまう編集が見事。
盛り上がった夜に何となく踊った男女が、次のショットでは翌朝に飛躍して、女は乗らなきゃいけない電車に向かって走り出し、男は女に手を引かれてる。
決定的な瞬間がないまま恋愛が始まるので、何処か寄る辺無さがある。