いわし亭Momo之助

大怪獣のあとしまつのいわし亭Momo之助のネタバレレビュー・内容・結末

大怪獣のあとしまつ(2022年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

東映と松竹が史上初のタッグを組んで映画製作をするなんて、なんてことだ! と最初は思った。

ワーナーブラザーズと20世紀フォックスがタッグを組んだ『タワーリング インフェルノ』は紛うことなき大傑作だった。だがしかし、あれと同じことを期待したらとんでもないことになる。種明かしをすれば実に簡単なこと。仮面ライダーは東映、ガメラと大魔神は大映(そういえば、映画の最後に、おまけの様に次回作の予告編が付いているのだが、次回作で登場する怪獣はメラという名前で、甲羅があるそうだ 爆)、ゴジラは東宝、ウルトラマンは松竹だ。それだけの事。俳優はそれなりに豪華だが、映像的なしょっぱさから見て、タッグを組んでの潤沢な資金に期待 ということではなく、結局は版権所有の関係だけ… のようだ。
例えば、マーヴェルを代表するヒーロー スパイダーマンが ‟マーベル シネマティック ユニバース” に中々、登場せずファンをやきもきさせたのは、ソニー ピクチャーズ エンタテインメントがスパイダーマンの映画化権を獲得しており、サム・ライミ版の『スパイダーマン』三部作をすでに制作していた関係で、調整に時間がかかった という何ともしょうもない大人の事情がある。
また ‟あとしまつ” という点でいえば 若手学者25人がまじめ分析 科学特捜隊の組織・技術戦略を検証する という惹句で1991年に発刊された『ウルトラマン研究序説』というくだらない本で、すでに触れられている。この本が出た当時、古本屋で立ち読みして、いやいや 例えばスペシウム光線で怪獣 燃え尽きてるやん とか ウルトラマンが持ち上げて宇宙まで捨てに行ったやん とか 怪獣墓場とかあったやん とか突っ込みどころ満載の本で 本来 ウルトラシリーズの本質はそんなところにはない。
そもそも、帯刀アラタがウルトラマンなのだから、あれやこれやしなくても、最初から宇宙に捨てに行けばそれで話、終わるやんか ということ。実際、エンディングは、そうなってしまったし…
怪獣をシン・新型肺炎に仮託して、日本政府のお粗末な対応を皮肉たっぷりに描く という点に関しては、シリアスに徹すれば余計な炎上に巻き込まれる懸念をアホみたいな演出で、うまく回避している(結果オーライ?)。ただ、実際の日本政府はもっと凶悪で、もっとポンコツで、もっとタチが悪いが… 
あと シンプルに山田涼介、土屋太鳳は美しかったし、オダギリジョーはカッコよかった。

松竹が2000年代までに制作した唯一の怪獣映画は『宇宙怪獣ギララ』で、これはいわし亭が生まれて初めて映画館で見た映画であり、相当な思い入れがある。松竹のやらかしは今回に限らず、タケ魔人(実は巨大化したタケちゃんマン)とギララが戦う2008年の『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』もトンデモで、実はいわし亭は相当にイカっているのだ。従って、今回のポンコツぶりも、予期出来たと言えば、出来たのである。
こうした巨大ヒーローもので、面白いなと思ったのは、松本人志の第一回監督主演作品であった『大日本人』で、日本とヒーローの関係が、安保条約を挟んだ日本と合州国アメリカとの関係と全く同じであることを、いみじくも看破したことだった。
昭和第1期ウルトラシリーズ(空想特撮シリーズ)は、子供向けのように思われているが、実は監督にしろ脚本家にしろ、そうとう自由に好き勝手出来たようで、これは今日的なテーマを持った傑作が量産されたヌーベルヴァーグやアメリカンニューシネマにも通ずるムーヴメントではなかったか。
脚本家 金城哲夫、上原正三、監督 実相寺昭雄らが関わったウルトラシリーズについては、ぜひ、鑑賞することをお勧めする。